グローバル人材~産業界で求められるグローバル人材の姿~

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「グローバル人材」という言葉が、よく聞かれます。
そもそも「グローバル人材」とはどういう人の事を指すのでしょうか?

・日本以外で活躍する人のこと?
・世界中どこでも活躍できる人のこと?
・日本に住んでいても、グローバルな視点を持って活躍している人も?

一般的に、どのように「グローバル人材」という言葉が使われているのか。また、日系企業では、どのようなグローバル人材が求められているのかということを、この記事で解説していきます。

実際、日本企業が長期の成長を志向する場合、日本国内市場のみならず、海外市場を目指すのは、当然の方向性でしょう。

一方で、「グローバル人材」、すなわち、海外でも活躍できる日本人は、その必要性と比較すると、圧倒的に不足しています。

実際に、多くの日本企業で、グローバル人材の育成を経営課題、そして、人事課題の一つとして挙げられています。今の駐在員だけでは足りていないのです。今後の更なるグローバルな世の中に備えて、海外で活躍できるグローバル人材候補者を、もっと日本企業として育て、人材プール(人材を蓄えておくこと)を作っておく必要があります。

私自身、現在、シンガポールと日本を行き来しつつ、年間1000人以上のグローバル人材育成に携わっています。その経験も踏まえて、日系企業の4つのタイプの「グローバル人材」とそれぞれのグローバル人材をどうやって自社内に確保・育成していくのかを解説していきます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【目次】

1.グローバル人材の定義
1-1.日本でしか使われない曖昧な言葉「グローバル人材」
1-2.各種政府機関が定義するグローバル人材とは

2.日本企業で求められるグローバル人材
2-1.日系向けグローバル人材
2-2.真のグローバル人材

3.自社流グローバル人材の定義のススメ

4.タイプ別グローバル人材の確保・育成方法

5.日系企業がグローバルでの成功を実現する条件

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

1.グローバル人材の定義

1-1.日本でしか使われない曖昧な言葉「グローバル人材」

「グローバル人材」を英語で言うと何でしょうか?

Global Person? Global Human Resource?

このような英語の表現では、一般的ではありません。
それは、グローバル人材という言葉自体が、日本オリジナルな言い方だからです。

一般的には、日本では、日本以外の国で活躍できる人の事を「グローバル人材」と呼ぶ傾向があります。

1-2.各種政府機関が定義するグローバル人材とは

それでは、次に、経済産業省が定義するグローバル人材の定義を見てみましょう。

「立体的に物事を考え、 多様なバックグラウンドをもつ同僚、取引先、 顧客等に自分の考えを分かりやすく伝え、文化的・歴史的なバックグラウンドに由来する価値観や特性の差異を乗り越えて、相手の立場に立って互いを理解し、更にはそうした差異からそれぞれの強みを 引き出して活用し、相乗効果を生み出して、新しい価値を生み出すことができる人材」

この中で、特徴的なのは、「相手の立場」「強みを引き出す」「相乗効果」「新しい価値を生み出す」というキーワードです。

要するに、この定義では、日本人だけの考え方にとどまることなく、違いのある人のことを受け止め、相乗効果を生み出す人の事を指しています。

次に、文部科学省が定義するグローバル人材の定義を見てみましょう。

「世界的な競争と共生が進む現代社会において、日本人としてのアイデンティティを持ちながら、広い視野に立って培われる教養と専門性、異なる言語、文化、価値を乗り越えて関係を構築するためのコミュニケーション能力と協調性、新しい価値を創造する能力、次世代までも視野に入れた社会貢献の意識などを持った人間」

こちらでは、「日本人としてのアイデンティティ」を持ちながらも、「広い視野」を持って、「新しい価値を創造」する力、長い時間軸で物事を考えられる人を指しています。

これら2つの定義を見ても、分かる通り、現時点で、「グローバル人材」についての一般的に共通した定義がある訳ではなく、なんとなく、「世界(日本以外)で活躍する人」、「世界に通用する価値を提供できる人」という意味合いで、様々な言い方で定義されているのが実情です。

【参考】経産省「グローバル人材」に求められる能力・資質とその育成方法の検討について

【参考】文科省「グローバル人材の育成について」

2.日本企業で求められるグローバル人材

 

次に、企業では、どのような文脈で「グローバル人材」が求められているのかを見ていきたいと思います。
端的に言うと、

・日本以外の場所において、ビジネスの成果を出せる人
・日本人以外の人と一緒に協働して、ビジネスの成果を出せる人

になります。

本来の「グローバル」という意味からすると、「世界中どこであっても」という意味あいが含まれますので、本来的には、「世界中どこに言っても、価値を提供できる人」「地球規模で、声がかかり、価値を提供できる人」の事を「グローバル人材」と呼ぶのが正しいと思います。

しかし、日本企業においては、まずは、日本以外のどこかの国(例えばアジア)で、成果が出れば、まずは「グローバル人材」と言われる傾向があります。

でも、本当は、アジアで成果を出せたとしても、ヨーロッパで成果を出せるとは限りません。しかし、日本ではまず、海外で活躍し、成果を出せる人が少ないことから、まずは、どこか日本以外の国でビジネスの成果が出せる人は、「グローバル人材」と呼ばれてしまっているという現実があります。

我々が考える2つのグローバル人材

実は、会社によって、「どのようなグローバル人材」を求めているかは、全く異なります。会社として、海外で活躍する人を育成する際には、「グローバル人材」という曖昧な概念で留めずに、もう少し具体的に「分けて」考え、「育てて」いくと効率・効果的です。

日本企業において、海外で活躍する人材パターンとしては、いくつかあり、それぞれにおいて、求められる能力が変わってきます。どのパターンかによって、育成すべき能力も変わってきます。

日系向けグローバル人材:海外の日本企業を主な顧客とする、もしくは、日本企業のやり方を海外展開する人材

海外の日系企業を主な顧客として、日本のやり方を海外展開する際に求められる人材です。

日本のやり方をそのまま海外に横展開するので、まずは、日本のやり方を熟知している事が重要になります。このタイプの人材には、下記の能力が主に求められます。

(ア)成果創出力:日本で成果を出し、日本のやり方、自分のやり方に誇りと自信を持っている
(イ)テクニカルコンピタンス(専門能力):現地人材に尊敬されるだけの専門知識や技術、ノウハウ
(ウ)最低限の語学力:日本企業に興味を持っている人材とのコミュニケーションや、現地のオペレーショナル人材を根気強く育てる

実は、この日系向けグローバル人材も更に2つのタイプに分けることができます。

A)海外での日系的オペレーション人材

コスト削減のために、工場等を、安い人件費の国に移管し、その国の現地社員をうまくマネジメントしながら、日本での品質を維持するオペレーションを実現するために、派遣された日本人が数多くいます。

この場合は、ある種、先生的な立場で行く事も多く、日本の工場のプロセス、やり方をきちんと理解した上で、きちんとその現地の人達に教え、徹底してもらう能力が求められます。

主に求められる能力:低賃金の外国人に分かりやすく伝える能力。最低限の語学能力。根気強さ。徹底力。

B)海外日系企業とのコラボレーション(協働)人材

日本企業が海外に出ていくケースとして、取引先の日本企業が海外に出ていったので、付いていくケースも数多くあります。

この場合、海外でビジネスはしているものの、取引先のほとんどは、日本企業。

国によっては、現地社員も日本語を使うケースもあります。

主に求められる能力:日本人同士のネットワーク力、主に日本が好きな外国人とのコミュニケーション能力。語学力。

②真のグローバル人材:海外のローカル企業、グローバル企業を相手に、新しいやり方を創出し、展開していく人材

2つ目のパターンは、日系企業のネットワークにとどまらず、現地企業や現地のキーパーソンとつながり、ビジネスの機会を創出している人材です。このタイプの人材には、主に下記の能力が求められます。

(ア)プロアクティブリーダーシップ:主体性を持って動き、自ら仮説を立てそれを実行に移し、検証しながら改善し、周りの人を粘り強く巻き込んでいく

(イ)異文化適応力:様々な価値観・多様性を受け入れ、その違いを認めた上で、適応し、物事を前に進めて行く力がある

(ウ)価値創造力:今までの常識に囚われず、次の時代を創るイノベーションプロセスを実践出来る。自分と違う強みを持っている人と、Co-Creation(共創造)を起こす事ができる。

(エ)語学力:日本企業に興味のない外国企業社員に影響力を及ぼすレベルの語学力

(オ)内省力:自分の中の常識を疑い、自分を見つめる自己客観視する力。Self-awareness.

こちらの真のグローバル人材の方も、更に2つに分けることができます。

A)既存商品・サービスの現地の市場開拓人材

日本で成功した商品やサービスを、海外で展開していこうというケースです。

ただ、日本で成功したモデルがそのまま海外でも当てはまるとは限りません。

そもそも商品やサービスが、世界に通用する強みを持っていることが重要になります。ただ、それがそれほどの差別化でなかったとしても、現地ローカル企業との提携や、優秀な現地社員を採用し、活躍してもらい、現地のニーズにあわせて、進化させていくことが成功の鍵となります。

主に求められる能力:ローカル人材とのネットワーク力、信頼構築能力。交渉力。協働する力。ある一定以上の語学力。

B)海外における全く新しいビジネス創出人材

海外市場における新しいビジネスを創出するには、海外のその現地で求められているニーズを捉え、そのニーズに合わせたものを新しく、ローカル人材と協働して、作り上げ、それを拡げていく能力が必要になります。

主に求められる能力:ニーズ把握力、多様性を受容する力、ローカル人材とのネットワーク力、信頼構築能力。Co-creation(共創造)能力。ある一定以上の語学力。

 

【事例】京セラ「東南アジア9カ国横断エンゲージメントサーベイと駐在員研修で組織が変わった」

3.自社流グローバル人材の定義のススメ

ここまで見てきたように、日本では、「グローバル人材」という曖昧な言葉がよく使われていますが、大きく分けて4つのタイプに分かれます。

1.海外での日系的オペレーション人材
2.海外日系企業とのコラボレーション人材
3.既存商品・サービスの現地の市場開拓人材
4.海外における全く新しいビジネス創出人材

自分の会社で求められるのは、上記の4つのどのタイプでしょうか?

また、その仕事が、具体的にどの国の、どういう環境で、どんな人と成すことを求められているのかを、具体的にブレークダウンして考えてみることをお勧めします。

それを突き詰めていくと、具体的に必要な能力も明確になり、採用計画や、育成計画も立てやすくなるでしょう。

特に、人材育成はすぐにはできません。将来のグローバル展開・ビジネス拡大に備えて、今から、海外で活躍する「グローバル人材」のプール(蓄え)をしておくのがいいでしょう。

【事例】ローム「人事制度のグローバル化とローカル化-普遍性と個別性を生かして強いグローバル組織へ-」

4.タイプ別グローバル人材の確保・育成方法

4-1: 海外での日系的オペレーション人材の場合

必要となるグローバル人材が、「海外での日系的オペレーション人材」の場合、現地の方々から、尊敬されるだけの技術力や、経験、ノウハウを持っている日本人を候補者として、選定するのが一般的です。また、その候補者の中から、オペレーションを根気よく教える事が得意な面倒見のいい人を選定し、その人に、語学や、異文化マネジメントを継続的に、徹底的にトレーニングするのが効果的です。

このタイプの人の場合、海外で働くということを考えたこともない人も多いので、ある程度の数をまとめて育成する方が、赴任する日本人同士で支え合えるので、効果的です。

4-2: 海外日系企業とのコラボレーション人材の場合

必要となるグローバル人材が、「海外日系企業とのコラボレーション人材」の場合、特に、海外での交渉相手となるキーパーソンが日本人の場合は、日本国内で、コミュニケーション能力が長けていて、新しい環境下でもネットワークを作ることができる人に、海外への出張や、海外勤務を打診するのがいいでしょう。このタイプで、顧客のキーパーソンが日本人の場合は、日本と同じような形で仕事が進むので、海外での生活・環境面の問題さえクリアーされれば、ある程度の成果が見込めるかと思います。

また、海外の日系企業であっても、現地化が進んでおり、現地社員とのコミュニケーションが主体になっている場合は、語学力を上げる必要があります。その場合は、現地の日本語が喋れる現地社員とペアを組んで活動することも考えられます。

4-3: 既存商品・サービスの現地の市場開拓人材の場合

この場合は、日本での既存サービスを、海外の現地で展開していくとなるので、長期的に考えられるのであれば、海外展開先の国籍の社員複数人を日本で採用し、成長した頃に、該当の海外展開国に、派遣するという形が最も効果が上がります。

ただ、この場合、離職してしまうリスクもあるので、そのキャリアプランについて、予め同意しておく事が重要になります。

同意していたとしても、辞めるリスクがあることはあるので、そこを踏まえた上での採用・育成と捉えましょう。

また、それが難しい場合は、ビジネス展開能力が高い日本人に、語学力を高めてもらうのが一般的になりますが、ビジネス展開能力も、日本でのビジネス展開と海外でのゼロからの展開能力では大きく異なりますので、ゼロから形にするタフさやその状況を楽しむ姿勢や、日本のやり方にとらわれない柔軟性も非常に重要なポイントとなります。異文化の人とのネットワーク力や、信頼関係構築を行うために、異文化の尊重が如何にできるかも、重要な要素になります。語学力を高めるためのトレーニングのみならず、短期の海外派遣プログラムなどでの修羅場体験なども経験してもらい、異文化の人への偏見をなくしたり、信頼関係を短期間で構築するトレーニングが効果的です。

4-4: 海外における全く新しいビジネス創出人材の場合

この人材が必要な場合は、日本人という国籍にこだわらない方がいいでしょう。

非常に難易度の高い領域でもあります。

世界中の候補者から、もしくは、該当国の現地採用の候補者から、優秀で、実際に似たような経験をしているキーパーソンを確保することがまず、一番重要です。そして、その人を中心に、どのようにチームを組んでいくかが論点になってきます。

それぞれの分野のプロの視点を持っている人と共に、それらの多様性を受容し、活かすマネジメント力、ローカル人材とのネットワーク力と、Co-Creation(共創造)するための自分の常識を疑う力、内省力や、常に最高のものを作ろうとする姿勢、視野の広さが重要になってきます。

多国籍チームで、多様なタイプの人間をマネジメントできるマネジメント力を持つ人を、必ずリーダーに添えましょう。

この領域は、日本人を育成するには、かなり時間がかかってしまうので、このような能力のある外国人と共に、育てたいと思われる人を協働することで、現場のOJTで育てていくのが重要になります。

そのプロセスの中で、必要な戦略構築能力や、ファイナンスの知識、異文化マネジメント能力などの研修プログラムを、タイミングよく、提供していく事が最も効果的です。

【事例】日本電気(株) 海外修羅場プログラム/ 社会課題の解決を通じで考えるこれからのリーダーのあり方

5.日系企業がグローバルでの成功を実現する条件

日系企業がグローバル環境で、成功をおさめることを考えると、圧倒的な商品力やサービス力が、世界の中で際立っていた数十年前は、その商品力・サービス力のみでも、成功を納める事ができました。

今は、中国・インド・東南アジアなどを中心とした新興国が、品質が追いつき、コストも安いものを提供しはじめています。

そういうグローバル環境の中で、日系企業が更に進化を遂げ、世界の中で成功を収めていくには、今まで、力を入れて来なかった「グローバル人材の確保・育成」を、戦略的に行うことが重要です。

世界での競争力 = 商品戦略・サービス戦略 × 組織・人材戦略

となって来ています。

今こそ、グローバルで成功をおさめるための「グローバル人材の確保・育成」を戦略的に行っていきましょう。

【参考】元P&G米国本社アジアプレジデント兼アジア最高責任者 桐山一憲氏から学ぶ
グローバルで活躍する人材の育て方、グローバル組織運営のポイントvol.1

グローバルで活躍する人材の育て方、グローバル組織運営のポイントvol.2

本記事の執筆

森田 英一

President & CEO

 

 

 

和久田 恵太郎 

Chief Operating Officer

 

 

 

 

The following two tabs change content below.
グローバルリーダーシップ研究所 beyond 編集部
グローバルリーダーシップ研究所 beyondは、日本企業のグローバル化の成功に役立つ「グローバルリーダーシップ」「グローバル人事・組織」「海外赴任・駐在」に関する情報やナレッジを発信します。

この記事がよかったら「いいね!」お願いします。

関連記事