「グローバル人事における、適材適所を実現する人材マネジメント」をテーマに、職務フィットを科学的に測定できる、米国発祥のアセスメントツールProfileXT®を提供しているHRDグループ代表の韮原光雄氏と、弊社代表の森田英一との対談を、2回に分けてお届けしています。
今回は前半の続きから、お話しを伺いました。
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HRDグループ代表 韮原氏とbeyond global森田との対談:適材適所のタレントマネジメントで個の資質を最大限に活かす方法Vol.1
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『地域統括人事の現在(いま)と未来』2019年9月24日(火)14時半~ @シンガポール日本人会館(参加費無料 / 申込受付中)
1.グローバル人事の潮流はスペシャリスト志向
ジェネラリストを育てる日系企業
森田:これまでの日本企業は「同一性」を重視する傾向にあり、ジェネラリストとしてある程度何でもマルチにできる人材を育ててきました。強みを伸ばすというよりは、弱みを補完して、全体的に「平均点が取れる人」が求められてきた。学校教育も含めて、「失敗しないことを良しとする」価値観の促進が、企業文化にも根強くありました。
韮原:日本はジョブローテーションをして、色々な職務を経験させますからね。
森田:ジョブローテーション自体には、視野が広がったり、違う立場の人の気持ちが理解できたりといったプラスの側面ももちろんあると思います。一方で、昨今のグローバル人材マネジメントの方向性としては、逆にジェネラリストはそれほど求められません。例えばシンガポールでは、スペシャリスト志向が強い。「この分野では私は誰にも負けません」という専門性を極めることを重視されます。各分野のスペシャリストが、お互いの強みを最大限活かしつつ、チームで成果を出そうという流れになってきています。
グローバル市場で勝ち抜ける、もっと尖った人材が欲しい
森田:日本の特に新卒採用においては、ある程度ジェネラルに万遍なく、優秀な人材を採用するという傾向がありましたが、世界トップクラスのグローバル市場で、日本が勝ち抜ける競争力をつけるという意味では、もはや無難なジェネラリストでは太刀打ちできない状況もあります。むしろ、もっと尖った人材や、特性に偏りのある人材こそが求められてくる。そのようなときに、ProfileXT®で「この職務にはこういった尖りや偏りのある人材が欲しい」といったモデル設計も可能になることに魅力を感じています。たとえば、協調性や組織従順性はないに等しいけれども、決断性と独立性がずば抜けている人材など。これまでの見立てでは、見えてこなかった人材像が浮き上がってくる可能性がある。
2.人と違うことが武器になる時代
「人間はアヒル=DUCSである」
韮原:おっしゃる通りですね。違いやユニークさこそ、武器になる時代ですから。職務配置のうえで、なぜアセスメントが重要なのか?という観点でお話すると、私たちはよく「人間はアヒルである」という喩え話をすることがあります。アヒル=DucksならぬDUCSと呼んでいるのですが、人は皆それぞれ、Different:違っていて、Unique:ユニークであり、Complex:複雑であり、Special:特別な存在であると。だからこそ、複雑な人間を理解するために、個々人の特性を正確に測定する必要があり、ProfileXT®のような精度の高いアセスメントが役に立ちます。
変革の担い手であるリーダーたちは誰しも、自分自身を知ると同時に、他者を深く理解することが求められます。なぜなら成果を導くためには、必ず「他者を介して」、他者との関係性の中で適切な影響力を発揮する必要があるからです。「測定できないものは管理できない」というドラッガーの名言がありますが、自己と他者の潜在的特性を測定し、そしてそれを理解することは、リーダーシップ開発においても、欠かすことができないステップなのです。
森田:そう思います。人は機械ではないので、特定の型にはめて、動かせるものでは決してない。人それぞれの特性と強みを理解して、その人が既に持っている素晴らしい資質をいかに引き出せるか、それこそがマネジャーや経営者の役割であると思います。当てはめたい型だけが先行して、肝心のその人自身を深く見ていないと、全くフィットしていない職務配置をしてしまうことにもなりかねません。
人は皆ホリスティックな存在
韮原:その意味では、人材を部分で機能的に捉えるのではなく、その人材の全体性をトータルで見る必要性を強く感じます。経営者自身もまた、自分をトータルで理解する必要があるし、従業員に対しても、全体を見ていることをしっかりと伝える、コミュニケーションが重要ですね。
森田:私たち経営者も人間なので、自分の眼鏡、自分のフィルターや期待で人を見てしまう傾向はあると思います。ともすると、自分に似た性質を持った人材は優秀に見えて、逆に自分とは正反対の性質を持った人材のことを、なかなか優秀だとは認められなかったり。その人なりの強みも必ずあるはずなのですが、弱みの方が目に付きがちで、強みに気づきにくいケースもあります。評価者の主観だけでは限界があるからこそ、アセスメントによる客観的な指標は有用ですね。
3.戦略なき人事施策は、タレントマネジメントサイクルの根幹に影響する
韮原:まさに、会社が見るべきポイントはそこにあると思います。職場の良し悪しは、3つの関係性で決まると言われています。①会社と社員(仕事と本人)の関係、②上司と部下の関係、③社員同士の関係、この3つの関係性が密であればあるほど、良い職場であると考えられます。
②の上司・部下の関係性を理解するには、Profiles Managerial Fit™(通称PMF)というアセスメントツールで測定することもできますし、③の社員同士の関係性でいえば、ProfileXT®で自己と他者のギャップを理解する方法が助けになります。
この3つの中でも、①の会社と社員(仕事と本人)の関係性がなかなか難しいのは、会社の期待と、本人の希望にミスマッチが起こりやすいこと。タレントマネジメントサイクルにおいて、企業と就労者のミスマッチは、戦略的な人事方針の欠如によって起こります。このミスマッチは、チームの生産性やパフォーマンスを低下させるだけではなく、無駄な研修費用の発生や、チームモラルの低下と欲求不満を誘発します。さらには、職務不適合者の配置転換にもコストがかかりますから、「戦略なき人事施策」がもたらす膨大な費用面・労力面での無駄を、見ていく必要がありますね。職務マッチングとは、人材のライフサイクルの根幹に影響しますから、それくらい重大な影響力を持つものであると、経営者は自覚すべきですね。
4.人材を見極める「共通言語」を手に入れる
森田:本当にそうですね。これまでの日本企業では、人事の目利きが効く人が社内に居さえすれば、人材の適材適所を見極めることも比較的容易でした。しかし私自身がいま海外で会社経営をしているうえでの実感としては、「グローバル環境における非日本人人材の見極め」はそういった属人的な目利きだけでは通用しない難しさがあるということです。
たとえばシンガポール拠点が東南アジア全域のリージョナルヘッドクオーター(RHQ)として機能している会社において、インドネシアやタイ、ベトナムなどの各拠点にバラバラに点在している人材の中から、優秀な経営者候補を抜擢したい場合、各拠点の現場からすると「本当に優秀な人材を現場から引き抜かれると困るので囲いたい」という想いもあるわけです。それ故に、現場の推薦からだけで適任者を特定することは難しい。
また多くの日本人駐在員の赴任期間は3~5年前後が多いですが、3~5年という限られた期間の中で、言語や文化背景が違う現地社員たちのコミュニケーション能力や職務遂行能力を深く知り、ひとり一人見極めることは、そう簡単ではありません。人間ですから、その上司と部下との相性の良し悪しで、「その人から見た優秀さ」というバイアスが当然かかります。そこで、主観的なバイアスをなるべく排除して、ひとり一人の社員を公平に理解するためには、ProfileXT®のような補助ツールが良い「武器」になる、と私は思っています。
韮原:同感です。人を見極めるときには、同じ尺度で見る必要があります。人材の采配には、共通言語が必要なんですね。もちろん中には、実際に人材の適材適所を見極めることができる人事のプロもいらっしゃいます。ある大手食品メーカーのグローバル企業では、人事のトップの方が、ご自身の目利きが本当に実情と合っているかどうか?を検証する材料として、ProfileXT®を活用された事例もあります。その企業では、世界各地にいるトップタレントから、誰が一番高いパフォーマンスを出しているか?誰を将来の役員に抜擢すべきか?を見極める際に、ProfileXT®をまさに補助ツールとして活用されています。
5.グローバル環境での限られた時間を有効に活用できる補助ツール
森田:なるほど。ProfileXT®の活用は、日本企業においては「同質性から抜け出す」という観点での活用は有益だと思いますし、私のようにグローバル環境でのビジネス展開を進めたい企業の経営者にとっては特に、心強い補助ツールになると思っています。グローバルビジネスにおいては、限られた時間内での短いコミュニケーションだけで意思決定をしていかなければならない場面の連続ですが、やはり日本語での対話に比べて、母国語ではない言語を使ってのコミュニケーションによる見極めはどうしても精度が落ちてしまう。そういう時に、世界33言語に対応しているProfileXT®を、その人の母国語で受けてもらえれば、ある程度の「人物像」や「特性」をまず知ることができます。
そこで思っていたのと違う、意外なアセスメント結果が出た場合は、その点についてその人物と対話して検証していくこともできますから、時間をより効率的に使いながら、密度の濃いコミュニケーションを図るうえで、非常に役に立つツールだと思います。
韮原:そう実感していただけているのはありがたいですね。ある日系企業の南米ペルーの拠点では、日本本社から赴任する駐在員に、武器としてProfileXT®を渡している事例もあります。これまでのやり方では、現地社員を理解するために一緒にゴルフに行ったり、飲みに行ったりして、長い時間をかけて会話を交わしていくわけですが、言葉や異文化の壁が厚く、どうにも解り合えないと。そこで、ProfileXT®を受けてもらうことで、早い段階でチームメンバーを理解する助けになるようです。
森田:たとえ時間をかけても、違う文化背景の相手の真意を理解することは、簡単ではありませんよね。言葉で表面的に言っていることと、内面で本当に考えていることや、その人の特性が必ずしも一致しているとは限りませんし。
韮原:そう思います。ある日系製薬会社の人事の例では、適任と期待したグローバル人材を日本から海外現法の責任者として送り出すも、失敗してしまったケースを聞いています。何回か失敗体験が続くと、さすがに「なぜだろう?」という話になってくる。
森田:確かにそれはよく聞きます。海外に送り出され、職位が上がり、仕事の幅も責任も一段と大きくなる。こういった挑戦を自由で楽しいと思える人もいれば、プレッシャーに感じてしまい、真面目すぎてうつになってしまう人もいます。だからこそ、職務マッチング機能は重大ですね。
6.日系企業のグローバル展開におけるProfileXT®の活用事例
韮原:そういった意味では、日本企業がグローバル展開していくうえで、ProfileXT®の活用事例も増えてきていますし、その確実な効果が実証されてきているとも言えます。グローバル化の波の中で、ProfileXT®のように便利なツールは、どんどん有効活用してほしいと思いますね。
森田:弊社のお客様の例では、シンガポールでの専門職向けの採用時に、ProfileXT®が活躍した事例があります。かなり特殊で専門的な職務ポジションに合った人材を採用したいというご依頼でした。ただ駐在員のトップの方も、人事の専門家ではないため、面接だけでは見極めにくいということで、まず相談させていただきながら、パフォーマンスモデルを一緒に作りました。そして、何人かの候補者の中から、最もその職務に合った人材をセレクトするお手伝いをさせていただきました。御社の事例では、如何ですか?
韮原:多数ありますけれども、大手のグローバル通信会社の例では、現地の要職向けにパフォーマンスモデルを作りました。シンガポール、ニューヨーク、ロンドンといった各地域のハブになるような拠点で、「この人物は確実に成果を出している」と思われるハイパフォーマー人材を選び、彼らのアセスメント結果を分析しました。そこに加えて、「会社としての期待」と職務分析サーベイを本社および現地から取って、それらを混ぜ合わせたうえでパフォーマンスモデルは作られます。さらに作って終わりではなく、たとえば実際に日本本社から現地に送り出した人材が成果を出しているのか?という検証までを行います。検証は、2年程経ってから行いますね。
また日本人だけではなく、現地の要職をナショナルスタッフに任せたいといったフェーズに入ったときにも、このアセスメントが役に立つと思います。日系企業のヨーロッパ拠点では、特に大手商社や金融機関などで、現地法人の予算でナショナルスタッフの中途採用を行うケースが多々あり、ProfileXT®を活用して現地スタッフを採用したという事例をよく聞いています。
森田:日系企業のグローバル展開には今後ますます、欠かせないツールになっていくと感じます。私が思うに、ProfileXT®の素晴らしいところは、特定の職務に関する、あるべき人物像を協議するうえでの「共通の尺度」になり得る点にあります。アセスメントツールそのものももちろん有益ですが、そのツールを介在して起こるディスカッションの質が深まり、人材の見極めの精度が上がることが期待できます。人材採用後、想定外の特性を発見したときにも、PDCAを回しながら微修正をかけていくことで、よりその職務に合った適任者を登用できる、とても良い材料になります。
7.「使いこなす」ことで人事担当者の教育ツールとしても機能
韮原:そうですね。「精度を高める」という観点で言うと、実際に企業内の人事担当者が、このProfileXT®を使いこなし、微修正をかけて検証を重ねられるというメリットがあり、その点は他のアセスメントツールとは一線を画すところです。
森田:確かに他の診断ツールは中身がブラックボックス化されていることが多く、こんな結果が出ましたね、で終わってしまいがちです。ProfileXT®の場合は、会社が求める人材を細かく分析しながら、戦略的な人事を進めるためのツールであると理解しています。また時代の変化に合わせて、同じ職務に求められる業務範囲が変化した場合にも、人事がアセスメントを使いこなすことで、柔軟に対応できると思います。
ある意味で、人事のプロフェッショナルたちにとっては、「人事の目利き力」を磨くための、教育ツールにもなり得ると感じます。企業は今まで以上に幅広く、多様な人材を活かすマネジメント力を求められますし、人材のポテンシャルはまだまだ、計り知れない伸びしろを秘めています。
グローバル市場においても、日本人の優秀さは卓越したものがありますが、まだ充分に活かされきってはいません。その点は、日本企業の今後の持続的成長の可能性につながると信じています。
8.採用後の「育成」にまで使えるコーチングレポート
韮原:おっしゃる通りですね。先ほど、ProfileXT®で理想のパフォーマンスモデルを作り、その職務とのマッチング割合を測ることが可能というお話をしましたが、そこでフィットした人材でも、少なからず理想とのギャップはあると思います。採用して終わりではなく、いざ見極めて採用した人材を「どう活かしていくか」という育成の部分も非常に大切です。
そこで、ProfileXT®では人材育成にあたり、上司がその人物にどのようにコーチングしていけば良いか?を具体的に記載した「取り扱い説明書」のようなレポートが出力できます。このレポート情報は本人にとってももちろん役に立ちますし、上司にとっては心強いマネジメントツールになります。さらに人事にとっては、チーム全体の育成プランを練るうえでの信頼度の高い情報になり得ます。
森田:サクセッションプランにおける人材の選抜だけではなく、その後の「育成」にも使えるのがいいですね。
韮原:はい。あるタイの部品メーカー企業では、現地の工場長をナショナルスタッフに任せたいということで、パフォーマンスモデルを作りました。そこから、候補者を選抜し、実際に育成のためのブリッジまで架けて、コーチングを実施している段階です。その企業様には、ProfileXT®の活用範囲の幅広さと実用性の高さに非常に満足していただけたとの報告を受けています。
森田:我々もそういった案件は今後、増えていくと感じています。ナショナルスタッフの見極めは実際、本当に難しいですから。要職であればあるほど、採用のインパクトは大きいですし、失敗できない責任の重さも伴います。しかしこうしたツールを使うことで、限られた面接の時間を有効に使うことができます。面接で聞くべきことの概要がわかる「インタビューガイド」は企業にとって重宝するのではないでしょうか。
韮原:ありがたいことに、「インタビューガイド」の実用性は高評価をいただいています。採用を間違えてしまった場合の無駄なコストが一体どれほどかかるのか?は経営者であれば分かるはずですから、ProfileXT®がそうしたミスマッチを防ぐ一助になれば、と思っています。
9.人材は「無難にそこそこ」ではなく「最大限に」活かす
森田:ミスマッチを防いで、そしてその人材を無難に活かすのではなく、最大限に活かすことですよね。
韮原:その通りです。一番の目的は、ひとり一人が既に持っている資質を輝かせることです。
森田:その人の才能が花開く、まさに可能性を最大限に発揮できるベストポジションを見つけてあげることは、企業にとってのコストメリットは計り知れないですし、ひいてはそれが社会貢献につながっていくと感じます。私たちのミッションでもある日系企業のグローバル化支援にとって、今後ますます、強力な武器であり、補助ツールとなり得るProfileXT®を、これからもグローバル展開していきたいと考えております。韮原さん、本日は貴重なお話、ありがとうございました。
韮原:こちらこそ、とても良いディスカッションをありがとうございました。
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