海外拠点で成果マネジメントを導入する際の3つの観点

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リモートワークが進む中、「上司が部下の仕事ぶりを常時観察できない」ことから、日系企業ではメンバーシップ型からジョブ型へ、プロセス評価から成果評価への意向が話題になっています。

その中、成果マネジメントも、時代の変化の速さに対応できるように、年に1, 2回のみ評価を行う「MBO」を疑問視されるようになり、比較的評価サイクルが早く、チームや組織単位で目標を共有し、より組織を一体化させるOKRやKPIといった手法を導入する動きも出てきています。

ただ実際のところ、

・成果マネジメントを導入したいが、何の成果マネジメントが自社に当てはまるのかわからない

・OKRやKPIをフレームワーク通りに導入してみたが、思った通りに運用されない

といったように、多くの企業で「どんな成果マネジメントでどう運用すればいいかわからない」というご相談をいただきます。

しかし、成果マネジメントにおいて、正解はありません。
これを導入すればうまくいく、といった優れたフレームワークはありません。

理由は、各社の企業文化・歴史が違うためです。

OKRを考案したと言われているIntelも、現在の状況を打破するためにどうすればいいかを考えた結果、「Management by Intel」という成果マネジメント手法を創り出し、それをよりシンプル化したものがOKRという枠組みです。成果マネジメントのフレームワークは、かなりシンプルに綴られているものが多い反面、そのシンプルさでは太刀打ちできないほど、現在の組織は複雑性を増しています。

特に海外拠点に至っては、本社の意向という、大きな壁もあるかと思います。また、日本本社では考えれないようなダイバーシティーな環境です。

だからこそ、自社の成果が最大となる成果マネジメントを考えていくことが重要ではないでしょうか?

そこで、本記事では、日系の海外拠点が成果マネジメントを導入・変更する際の道具となる、検討すべき観点をお伝えします。

これらの観点を踏まえて、ぜひ自社における成果が最大となるマネジメント方法について考えてみてください。

成果マネジメントの種類とそれぞれの特徴とは?

まず最初に、成果マネジメントの基本的な概念を紹介します。

実際にあなたが成果マネジメントに何を期待しているのかを意識しながら、それぞれの概念を読んでみてください。

成果マネジメント手法は、大きく3つに分けることできます。

  • OKR(Objective and Key Result)
  • KPI(Key Performance Indicator)
  • MBO(Management by Objectives)

OKR(Objective and Key Result)

ストレッチな目標と組織と個人の方向性を揃えることで、組織の生産性を高め、イノベーションを促進させるための目標管理手法です。組織の最も重要な目標・ビジョンに対して、組織のリソースを集中させ、社員の目標・ビジョン達成への意欲を向上させながら、ハイスピードな目標達成を目指すことができます。

目標設定の構成は、「1つのObjective(何を)」と「複数のKey Result(どのように達成するのか?)」から成り、他の成果マネジメントよりも、「なぜその指標・行動を追っているのか」を明確にできます。

比較的スピード感のある事業運営の、ITスタートアップ企業で採用するケースが多いですが、ここ最近では、「花王」が全面的に採用するなど、日系大手企業にも採用されつつある手法です。

KPI(Key Performance Indicator)

組織・プロジェクトの最終目標数値を達成するために計測する中間指標を指します。目標達成に適切なプロセスを明らかにし、各プロセスにおいてどういう状態であれば、最終目標数値を達成できるかを想定して、KPIを計測します。

目標設定の構成は、「KGI(組織・プロジェクトの最終目標数値)」と「KPI(KGIから細分化された指標)」から成り立ちます。

日本航空や丸井グループなど、日系大手から中小企業まで導入されており、従業員規模に関わらず比較的導入しやすい手法です。また、数値に落とし込みやすい営業やマーケティングといった部署のみに導入するケースもあります。

MBO(Management by Objectives)

組織目標と個人目標を統合し、それぞれの従業員の自主性を重視しながら、業績向上を目指していくマネジメントの手法です。目標と結果が明確になり、MBOの達成度合いと報酬が結び付けしやすいことから、日本企業の多くが人事評価として採用しています。

目標設定の構成は、「Obejective(目標)」と「達成基準」「達成期日」などから成ります。

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OKR / KPI / MBO のそれぞれの違い

ご紹介した成果マネジメントについて、よりイメージが沸きやすいように、それぞれの違いを説明していきます。

1. 評価サイクル期間・レビュー頻度

「OKR」は、一般的に四半期や1ヶ月ごとに見直すことが多いです。当初に目標を設定しても、状況の変化により目標と業務のズレが生じるため、3ヶ月に一度見直すようにしています。また、毎週、上司が面談してレビューを行い、組織の方向性と個人の業務の方向性が揃っているか、進捗状況によって他の部分に影響を与えないかを確認しマネジメントします。

「KPI」のサイクル期間は、明確な期間等はなく、組織・プロジェクトの目標達成を目的としているので、組織の評価期間やプロジェクトに合わせたスケジュールを設定することが多いです。レビュー頻度も組織やプロジェクト毎で大きく違い、毎月、毎週、もしくは日報内で行うこともあります。

「MBO」は、上司と部下の関係性の中で完結するケースが多く、組織目標との関係性がOKRやKPIよりも薄いため、サイクル期間の頻度は少なく、1年または6ヶ月の企業が多いです。また、レビュー頻度も期初から期末までの間に1回の中間面談が一般的です。

2. 目標の達成水準

「OKR」は、「組織全体が同じ目標に向かって仕事をし、その目標を通じて成長を促すのは、挑戦的な目標を達成するため」という思想のもと、達成基準は60~70%に設定します。この挑戦的な目標達成を目指すために、メンバーが予測通りのパフォーマンスを発揮すれば充分に達成可能な難易度のものではなく、達成できるか出来ないか分からない、達成率が60~70%程度になる難易度で設定するのが最適と言われています。

対して「KPI」は、最終目標を達成するための定量的な中間指標のため、100%が達成基準であることが多いです。「MBO」も定性や定量に関わらず、人事評価制度の結びつきが強いため、100%達成を目指します。

3. 目標の共有範囲

「OKR」では部門や部署、または組織全体で目的を共有する場合が多く、3つの手法の中で最も共有範囲が広くなります。

「KPI」はプロジェクト単位の目標なので、プロジェクトを担当する部門や部署内で目的を共有します。

一方「MBO」は個人レベルの目標で、一般的に上司と本人が目的を共有することになります。理由はボーナスや昇給・昇格などの判断要素となるためです。

ただ、アジアの現地法人の場合、社員同士でボーナスや給与金額を共有することが多いため、各目標を全社、または部署に共有する企業もあります。

4. 目標設定方法

「OKR」は、会社や部署のOKRを作成した後に、部下がそれぞれ、自分たちのOKRを設定していく方法が一般的です。そのため、ボトムアップの目標設定となります。理由は、なぜその目標を追っているかを従業員全員が把握し、組織と各従業員の考えの方向性をきちんと揃えるためです。

対して「KPI」は、組織・プロジェクトの最終目標から目標数値を考えるため、基本的にトップダウンの目標設定になります。組織目標と従業員が追う数値の方向性を合わせるためです。ただ、上層部だけで全従業員の目標数値を考えるのではなく、現場と相談しながら決めていくことが多いです。

「MBO」は、トップダウンとボトムアップ、どちらのアプローチもあります。従業員の自主性を意識する場合は、部下から目標設定を行い、戦略と現場を完全に切り離して考える組織や組織目標の達成を最重要視するなどの場合、トップダウンの目標設定を採用する企業もあります。

 

これら4つの観点は、どの成果マネジメントを採用しても検討すべきポイント

成果マネジメントの違いの説明の中で紹介した4つの観点は、導入する際に必ず検討する必要があります。例えば、OKRを導入しようと考えても、そもそも全従業員が60%~70%の目標設定をできなければ、運用することは難しいです。

そのため、今までの組織体制、マネジメントや社内の組織文化を踏まえた上で、「4つの観点をどうカスタマイズするのか?」を検討することが成果マネジメント導入の成功の鍵です。

 

海外拠点で成果マネジメントを導入する際の観点 3選

成果マネジメントの概要やそれぞれの違いを説明してきました。

ここからは、それぞれの成果マネジメントの特性を活かした、個社特有の手法を考え、取り入れるために、海外拠点で成果マネジメントを導入する際の観点をご紹介します。

  1. どんな企業・拠点に、何の成果マネジメントを導入すべきか?
  2. 誰に成果マネジメントを導入するべきか?
  3. 目標は個人で持つべきか?チームで持つべきか?

1. どんな企業・拠点に、何の成果マネジメントが最適か?

まず最初に、どんな企業に何の成果マネジメントを導入すべきか?を考えていきます。

各拠点によって事業フェーズが異なるため、それぞれの事業フェーズに最適な成果マネジメントを採用することが重要です。ここでは、ローカル市場の開拓などの新規市場開拓フェーズと、すでにある程度の成長予測を考案できる事業安定フェーズ、2つに分けて考えていきます。

新規市場開拓(変化が激しいフェーズ):OKR・MBO

海外拠点での大きなミッションの一つとして、ローカル市場の開拓やそのための組織の現地化が挙げられます。ローカル市場の開拓や組織の現地化は社内に今までの事例がないため、手探りで進めていかなければいけません。そのため、組織と個人の方向性を合わせ、組織一体となり、短いサイクルで仮説検証できるOKRは、成果マネジメントにおいてうまく機能しやすいかと思います。

ただ、「OKRを今まで運用したことがない」や、「組織がMBOに馴染んでいるケース」もあると思います。その場合は、MBOを採用し、短いスパンで評価・レビューサイクルを回す運用方法を取り入れることで、OKRよりも効果を発揮する場合があります。

このフェーズで重要なのは「適切な目標設定を行えるかどうか」です。事業成長と現場の課題感を考えた、目標設定を行えるローカル人材がいなければ、MBOであれOKRであれ成果マネジメントの効果が薄れます。MBOやOKRといった成果マネジメントを考えると同時に、社内ローカル人材のキーパーソンへの目標設定・マネジメント・リーダーシップなどのスキル育成/研修、1on1 コーチングを実施することも重要です。

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また、今までの経験・ナレッジを貯めていく目標設定ライブラリーやナレッジブックを作成することで、より社内人材の育成を効率的に進められていきます。

事業安定(変化が少ないフェーズ):KPI・MBO

すでに何の指標を見るべきかを把握している事業の場合、今までの経験則やナレッジブックから各等級に合った目標・評価基準を決定していくことができると思います。

この場合は、数値目標に落とし込める業務内容であれば、KGI・KPI、定性的な目標も含む場合はMBOを採用するのがおすすめです。

2. 誰に成果マネジメントを導入するべきか?

そもそも誰に成果マネジメントを求めるのかについて考えていきます。

成果マネジメントを導入する際には、最終成果を求める職種なのか?最終成果を求めない職種なのか?によって成果マネジメントの対象を明確にします。

オペレーションスタッフのような「決められたことをきちんとやってほしい」という会社の期待を持つ職種があるかと思います。そういった日常業務を正確にこなす職種に対しては、成果マネジメントがうまく機能しないケースが多いです。

理由は、最終成果を会社自体が求めていないのに、成果評価を実施することは一貫性がないからです。この場合、役割行動評価などを用いて、きちんとプロセスで管理することが重要になります。

そのため、この職種、または部署に対して、最終成果を求めるか?求めないか?によって、成果マネジメントを導入するかどうかを考えるのが望ましいです。

3. 目標は個人で持つべきか?チームで持つべきか?

チーム目標の達成を重視するのか?それとも個人目標の達成を重視するのか?を考えることも重要です。

最近、欧米ベンチャー企業では、生産性向上のためにチームファーストな文化を評価される傾向もあり、個人目標よりもチーム目標を達成するためにどうするのか?を考える人材を優遇する文献をよく目にします。
そのため、目標を開示し、チーム目標や組織目標との一貫性を可視化する、OKRやKPIが採用される理由の一つでもあります。

組織のポリシーとしてチーム目標、個人目標どちらを優先すべきか?を決めておくことで、目標をどこまで落とし込むかが明確になります。

もしチーム目標を優先する場合は、チームと個人の方向性を合わせるために、

  • 目標は、全社やチームへ共有し、
  • レビュー頻度を高く、評価サイクルを短くし、
  • チームミーティングでは、チーム目標を達成するために何をすべきか?を議論する

といった運用をすることで、チーム目標を優先する組織文化が根付きやすくなります。

 

まとめ:自社・拠点の特性を活かした成果マネジメント手法を導入する

OKR・KPI・MBOの説明から、海外拠点での成果マネジメント手法を考える際の観点をご紹介してきました。冒頭でお伝えしたように、、本社のやり方を採用せず、事業フェーズや各国の特性にうまくフィットした方法を拠点別に考えていくことが重要になります。

ぜひ本記事を参考に、成果マネジメントの社内でのあり方や運用方法を考えていただければと思います。

 

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