従業員エンゲージメント向上:日本企業だけが知らない業績アップの秘策

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従業員エンゲージメント向上:日本企業だけが知らない業績アップの秘策

今、世界中の企業が、企業の業績を上げるために取り組んでいる「従業員エンゲージメント(もしくはエンゲージメント)」を向上させる取り組みをご存知でしょうか?

世界中の企業が、取り組んでいる施策にも関わらず、日本では、従業員エンゲージメントへの認知が低く、誤解も多く見られます。

「要するに社員の会社に対する忠誠心(ロイヤリティ)?」
「つまり社員のやる気、モチベーションを高めるってこと?」
「コミットメントのこと?」

いえ、実は、エンゲージメントとロイヤリティはまったく違うものです。
そしてモチベーションやコミットメントとも似て非なるもの。
ロイヤリティや、モチベーションは、必ずしも、業績アップに直接つながるわけではありません。

業績アップにつなげるためには、「従業員エンゲージメント」を上げる必要があるのです。

この記事では、下記のように、世界企業の常識「従業員エンゲージメント」とは何か?そして、その施策を、どのように日本企業で活用し、業績向上につなげていくと良いのかという道筋を説明します。

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従業員エンゲージメントとは何か

日系企業でよく見られる、従業員エンゲージメントに対しての誤解

どうすればあなたの会社で従業員エンゲージメントが上がるのか

従業員エンゲージメントの向上がどの程度、会社の業績向上につながるのか

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ーー目次ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  1. 従業員エンゲージメントの定義
  2. 従業員エンゲージメントの日本の現状
  3. エンゲージメントのよくある誤解
  4. 従業員エンゲージメントが自然に上がる方法
  5. エンゲージメントが高まることは、どれくらいの効果があるのか。
  6. エンゲージメントが高い社員の行動例
  7. 従業員エンゲージメント向上のポテンシャルの高い国、日本

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1.従業員エンゲージメントの定義

この「従業員エンゲージメント」という言葉は、人事や組織開発の分野では、従業員の「(会社のビジョン・目標達成に向けての)自発的な貢献意欲」という意味合いで使われています。

すなわち、従業員エンゲージメントが高い、ということは、会社が目指している方向と、自分がやりたいことのベクトルが合っている状態を言います。

従来、婚約、結婚のシーンで使われている「エンゲージメント」という言葉だけに、会社と従業員が、幸せな結婚をしている状態、と言えば、イメージしやすいかもしれません。

従業員が、会社のビジョン・目標に共感していて、自分の人生の中でも、それを実現したいと思っているということです。

やらされている、とか、やらなければならないからやっている、のではなく、自分が心底やりたいと思っている、ということが重要です。

2.日本の従業員エンゲージメントは、なぜ低いのか

米ギャラップ社が、世界各国の企業を対象に実施した従業員エンゲージメント調査で、日本は「従業員エンゲージメントの高い社員」の割合がわずか6%であり、米国の32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位クラスでした。米エーオン・ヒューイット社の調査でも、同様に、日本の従業員エンゲージメントレベルは、世界最低水準となっています。

なぜ日本の従業員エンゲージメントは、世界的に見て、低いのでしょうか?

日本人は、長期間一つの会社に働くことがまだまだ美徳とされおり、責任感は強いのですが、一方で、色々なルールは厳しく、柔軟性に乏しく、上下関係も遠慮もあり、なかなか本音でのコミュニケーションは難しく、職場のストレスは高い傾向があります。

また、近年、コンプライアンスの強化などで、内向きな仕事が多く、会社の向かっているベクトルに向いて、自分が貢献しているという実感値が湧きにくいという傾向があります。

元々は、日本人は、「(会社のビジョン・目標達成に向けての)自発的な貢献意欲」は高かったはずですが、どんどん目の前の事に追われて、部分最適、短期最適になり、視野が狭くなっている傾向が、年々強くなっています。更に業務量が増えて、残業が多く存在する。

これらの要素が、従業員エンゲージメントを下げている要因と考えられます。

だからこそ、今、「働き方改革」が必要と言われているのです。

3,従業員エンゲージメントのよくある誤解

更に、「従業員エンゲージメント」への理解を深めるために、イメージしやすいように、今まで使われてきた言葉との違いから、エンゲージメントを高めるということがどういうことなのか、洗い出してみたいと思います。

誤解その1

ロイヤリティとエンゲージメントは同じ?

従業員エンゲージメントと、ロイヤリティ(忠誠心)とは、全く違うものです。

ロイヤリティは、会社が圧倒的に強い権力をもっている状態で、従業員が会社に尽くす、組織の繁栄のために働く、という構図です。

これは海外企業ではあまり見られない、日本に特徴的のカルチャーです。特に1970年代、日本の高度成長時代には、会社が社員にロイヤリティを求めることは一般的で、武家社会や侍を彷彿させる「会社を裏切らない」「上のために腹が切れるか」と言った言葉もよく聞かれ、会社を裏切らない、逃げない、やめない、ということは賞賛されるべきことでした。

そしてこの時代、ロイヤリティが高い社員が多くいることは、確かに業績によい影響をもたらしていました。

でも、今はそうではありません。

ロイヤリティは高くても、創造性が低く、自ら考え動くことができないため、会社にぶら下がっている社員が居ます。

今は、働き方、勤める会社にも、多くの選択肢があります。この時代においては、自らの意志で「この会社で働く」と決め、自らの理由で、会社のビジョンを実現しようとする人材、会社と共に自分の未来を描くことができる人材こそ、結果的に一番、力強く、会社の業績に貢献することができるのです。

誤解その2

コミットメントとエンゲージメントは同じ?

従業員の会社へのコミットメントと、従業員エンゲージメントも、異なるものです。

コミットメントは、相手に要求するものであり、コミットメントするのかしないのか、相手に選択を迫るものです。

エンゲージメントは、相手に何かを求めるものではなく、自然に湧き上がってくるものです。今の仕事に対するコミットメントが非常に高くても、長期的に、その会社で働くことに意味を見出せず、自分の未来を不安に思っている従業員は多く存在します。

誤解その3

モチベーションとエンゲージメントは同じ?

モチベーションの高い従業員と、エンゲージメントが高い従業員は、異なります。

モチベーションは、その人の中に生じるものですが、エンゲージメントは関係性を表す言葉です。

社員のモチベーションを上げるためには、ひとりひとりのモチベーションスイッチを点火していく必要がありますが、エンゲージメントはそうではありません。会社と社員は同じ未来を描き語り合う同士であり、よいエンゲージメントが構築されている事が、社員が長くその会社で、無理なく、主体的な行動を続けることにつながります。

誤解その4

従業員満足度(ES: Employee Satisfaction)が上がれば、業績は上がる?

日本では、10年ほど前から、従業員満足度を高めよう、という動きがあります。
これは、それ以前の時代に、会社が強すぎたための反動だと考えられます。

この「もっと社員の立場を考えよう」「従業員の目線でものを考えよう」という考えは、とても大切です。

例えば、いきなりクビにはならない、生活が脅かされないという保障は、当然ながら従業員の働く意欲、集中力に影響します。

しかし、給料を上げることや、社会福祉施設を提供するなどの、いわゆる従業員へのご褒美を充実させることと、業績が上がることには相関性がないことがわかってきています。むしろ居心地が良すぎること、従業員満足度が高いことで、ぬるま湯文化が蔓延し、全体のパフォーマンスが下がってしまうこともあるくらいです。

ではこの業績アップにつながる秘策、従業員エンゲージメントは日本企業において、どうやったら上がるのでしょうか。

4,従業員エンゲージメントが自然に上がる方法

4−1:会社のビジョンと個人のビジョンを語り合う

まずは、会社の社会に対するミッション(使命)、未来に向けてのビジョン、そして社会へのインパクトの与え方、バリュー(価値観)を明確にすると共に、今働いている社員ひとりひとりがそれを、一人ひとりが自分の言葉で語る場をつくる必要があります。

従業員エンゲージメントの高い会社というのは、経営者がビジョナリーであることはもちろんですが、社員ひとりひとりが、思いを持って、それぞれのビジョンを語れる会社です。
会社のビジョンと社員のビジョンをすり合わせていくプロセス自体が非常に重要です。

4-2: エンゲージメントサーベイによる見える化とPDCA

従業員エンゲージメントは、なかなか普段の仕事では見えにくいものです。
そこで、欧米企業を中心とする多くの会社では、このエンゲージメントを測定し、“見える化”する「エンゲージメントサーベイ」という従業員アンケートを毎年行っています。

ここで重要なのは、このサーベイの結果を、必ず従業員に公開するということです。その結果を受けて、経営陣は、従業員エンゲージメントをより高めるためのアクションプランを、サーベイ結果と共に、従業員全員に発表します。

結果が悪い場合も必ず、アクションプランと共に発表します。

また、エンゲージメントサーベイを実施する際には、会社全体のみならず、部署別のデータも取りまとめるようにしてください。

その部署のサーベイ結果を部署のメンバーに共有し、自分たちでこの部署の課題は何か、どうすればこの部署のエンゲージメントを向上することができるか、エンゲージメント向上施策について部署メンバー全員で、本音で話し合う機会をつくってください。

 

・自分は、部署をどうしていきたいのか(理想の職場は?)

・部署のリーダーとメンバーはどのようなことを考えているのか

・どうすれば、もっと良い職場になるか

 

このプロセスをメンバー全員が共有し、メンバーで、職場をよくしていくという取り組み自体が、組織へのエンゲージメント向上につながっていきます。

このように、定期的なエンゲージメントサーベイを通して、ひとりひとりのメンバーの考えていることがしっかり“見える化”し、現場レベルで、お互いの顔が見える相手と、日々意識できる形でPDCAサイクルを回していくことで、エンゲージメントを育むことができます。

4−3:透明性ある人事評価制度の運用とキャリア設計のすり合わせ

日本の会社は欧米の会社に比べて、人事制度の透明性が低いと言われています。それは人事制度の透明性が低いこと、ブラックボックスにしておくほうが、社員の統制が取りやすいという、会社側の事情がありました。

しかし、これは、会社側に大きなパワーがあったとき、有効な手段であり、今の時代にはそぐわないものになってきています。

人事制度が透明性をもって運用され、頑張って成果を出した分だけ、公平に評価されることは、従業員エンゲージメントを高める上で、絶対条件とも言える、非常に重要な土台です。自分の頑張りが、会社の目指している方向性に貢献し、それが自分のリターンにも返ってくるという好循環サイクルを生み出すものだからです。

特に海外現地法人等で、日本人以外の社員を雇う際には、人事制度が透明性をもって運営されていることは必須条件です。

 

日本人には考えられないかもしれませんが、海外では、誰がどれくらいの給料をもらっているのか、共有するのが当たり前の国も多く存在します。

会社側が仮に社員毎にしか給料を伝えていなかったとしても、お互いに給与額を見せ合うので、社員同士はよく知っているのです。

日本企業で働く外国人が、一番違和感を感じるポイントがここにあります。

もちろん日本人にとっても、人事制度に透明性がないことや、ある特定の人物によって給料の額が決まるような状態は、好ましくありません。

会社と個人の関係が、フラットではなく、公平性が感じられない場合、従業員は、お金をもらった分だけ働けばよい、それも効率よく、できるだけ自分にと楽な形で進めようという文脈になりがちです。

日本人だけの場合は、人事制度に透明性がなくても、仕事への美学、自分が関わったことは、最後までしっかりやろうという意識が働くことも多いものの、それは、あくまで個人の意識の問題であり、会社という組織や、未来を見据えての行動とは異なります。

 

人事制度に透明性があり、フェアに運営されていることが明らかであれば、従業員は、その会社で働く自分の未来を安心して、描くことができます。

自分の未来と会社の未来を安心して、重ねあわせて描くことができない従業員が、会社に対するエンゲージメントが高まることはありえません。

 

そして、会社側からビジョンと人事制度を元に、従業員ひとりひとりが、自分の人生のビジョン、キャリア設計について、すり合わせていく時間を作りましょう。

 

5,従業員エンゲージメントが高まることは、どれくらいの効果があるのか。

ここまで、従業員エンゲージメントを向上させるための施策をお伝えしました。
この過程は簡単なことではありません。手間も時間もかかります。

しかし今、従業員エンゲージメントについては、様々な調査と研究がされており、下記のような結果が出ています。

・従業員エンゲージメントの高い会社の営業利益率は、低い会社の営業利益率に比べて、1.5倍高い。

・従業員エンゲージメントが高い社員の割合が1%向上すると、売上が6%アップする。

この他にも、従業員エンゲージメントと会社の業績は、相関性があるという研究結果が、世界各国で出ています。

6,エンゲージメントが高い社員の行動例

エンゲージメントが高い社員の行動例として、下記のような例が挙げられます。

・会社の企業理念(ビジョンミッションバリュー)に共感しているので、社内の雰囲気が良く、活気がある。

・会社への信頼感があり、一緒にやろうという感覚で動くので、同僚と積極的に関わり、協力しあえる

・自分に今なにができるだろうかと、ひとりひとりが自分の頭で考えているので、問題が起こっても自発的に改善される

・全体像の把握、共有が自然におこなわれる

・視野が広くなる:やらされ感でやっていると、視野が狭くなりがちだが、ひとりひとりが、会社のビジョンであり、自分のビジョンも達成しようと動くので広い視野でものを考えることができる。

・業界最新動向への情報感度が高まる

 

以上のような効果が生まれるのであれば、従業員エンゲージメントを高めるための施策は、たとえ手間と時間がかかったとしても、充分にやる価値があるものです。

7,従業員エンゲージメント向上のポテンシャルの高い国、日本

従業員エンゲージメントについて、ご理解いただけたと思います。

私は、世界を見渡せば、日本ほど、日系企業ほど、エンゲージメントが向上するポテンシャルを持つ国民性、組織はないと思います。

従業員エンゲージメントという言葉には馴染みがなくとも、それに近いことは元々日本の強みでした。

例えば、相手と自分の立場を調整し、すり合わせ、お互いにとって幸せな関係を築くことは、日本人は小さい頃から訓練されているので、自然に行えます。誰かの役に立つ喜びは、日本人の精神文化として、根付いています。

また、高いチームワークスキル、仕事への内発的動機による美学など、日本人が持つ文化背景の中には、エンゲージメントを促す要素が多くあります。
もし日系企業が「従業員エンゲージメントの向上」に真剣に取り組み始めたら、業績への影響は、他の国の比ではありません。

もっと大きなインパクトをもたらすはずです。

世界ではすでに、「従業員エンゲージメント」を向上するための研究が進んでおり、業績向上につながることが証明されています。日系企業も、今こそ真剣に取り組み、日本独自のやり方も織り交ぜつつ、ぜひ業績アップにつなげていきましょう。

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森田 英一
大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュアにて、人・組織のコンサルティングに従事。2000年にシェイク社設立、代表取締役社長に就任。「自律型人材育成企業」をキーワードに、企業研修、人・組織関係のコンサルティングなどに従事。自身も講師として、毎年のべ5000人程に研修を実施。10年の社長を経て、beyond global社を日本とシンガポール、タイに設立し、President&CEOに就任。beyond global Japan(旧ドアーズ)社の「海外修羅場プログラム」が、全国6万人の人事キーパーソンが選ぶ「HRアワード2013」(主催:日本の人事部 後援:厚生労働省)の教育・研修部門で最優秀賞受賞。「ガイアの夜明け」「ワールドビジネスサテライト」等テレビ出演多数。主な著作に「誰も教えてくれない一流になれるリーダー術」(明日香出版)「「どうせ変わらない」と多くの社員があきらめている会社を変える組織開発」(php新書)等がある。

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