元P&G米国本社プレジデント兼アジア最高責任者桐山一憲氏に学ぶ    グローバルで活躍する人材の育て方 vol.4  

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P&Gが超ドメスティック企業からグローバル企業になるプロセス 〜辞める人を育てるのか?

前回は、若い桐山氏自身のストレッチ・アサインメントであった海外駐在での経験が、後にアジア最高責任者として活躍されるその後の桐山氏に、どのような影響を与え、その経験がどのように現在に生きているのかについて、お話をお聴きしました。

今回は”P&Gがドメスティック企業からグローバル企業になるプロセス 〜辞める人を育てるのか?”と題して、P&Gがアメリカのドメスティック企業から、世界を席巻するグローバル企業にまで上り詰める過程で取り組んできた人材育成の手法と、組織形態のあり方について、お話をお聴きします。

P&Gも最初は超ドメスティック企業だった

森田:以前(連載のvol.1) 、桐山さんがおっしゃっていましたが、今から30年程前、P&Gはアメリカでは既に大企業でしたが、まだ日本では小さな会社だったんですね。

桐山:P&Gはその当時、アメリカでは圧倒的シェアNO1(現在もNO1)で、これから更に成長しようと思うと、そろそろアジアに積極進出しなければならない、という時期に来ていました。P&Gが最初にアジアで進出したのは、かつて長らくアメリカの植民地であったフィリピンです。フィリピンはアメリカの影響力が大きく、進出も容易であり、また米国ブランド製品の需要が結構あったと思います。

その次にアジアで進出したのが、日本でした。その当時、P&Gグループは、収益のほとんどをアメリカで稼いでいて、グローバルの重要なポジションにいるのは8割以上がアメリカ人だったと思います。もちろん日本人なんて一人もいませんでした。つまり、その当時のP&Gはアメリカの、超ドメスティック企業だったということです。当然ながら、人事システムもアメリカのものを流用するかたちで使っていました。 当時は、高いコストをかけてアメリカ人を中心とした欧米人が海外に駐在し、中には、高い給料+高額の駐在手当をもらって、大した仕事をせずに本国に帰る、という人もいて各拠点でも、そして本社側でも問題になっていました。

アメリカ主体の形では、ローカルスタッフを上手くいかせず、海外でのビジネス自体が長らく苦戦をしていました。そこで、90年代の半ばに、現地化(ローカライゼーション)を積極的に進めると共に、その全体を管轄するグローバル共有の人事システムを導入することになりました。

これによって、グローバルで共通の透明性のある人事評価ができるようになり、国籍や人種を問わず、がんばって結果を出せば、きちんと報われるようになりました。

特に、マイノリティの人にとっては、頑張った結果を公平に認められるというのは、とても大事なことです。

そうなると、一般的に、マイノリティの人は、マジョリティの人よりも更に頑張ると言う傾向があります。

将来のリーダーにはしっかりと投資する

森田:それによって、ローカルスタッフが頑張って成果を出そう、成長しようする人事インフラが出来た訳ですね。

それと共に、各拠点で、その拠点を任せられるような、リーダークラス、経営者クラスのローカルスタッフを育成しないといけない、ということになりますね。P&Gはこのときに、かなり育成に投資をしたのではないかと思いますが、そのあたりはどうでしょうか。

桐山:のべつ幕なく誰にでも投資するわけではありませんが、将来リーダーになるだろうと思われる人物にはかなり投資していると思います。その投資は時間、バジェットそしてエフォートも含みます。育成の目的はその人物のスキルをただ単に向上させるだけではなく、ビジネスリーダーとしての視座を高めることです。P&Gはリーダークラスをヘッドハンティングなどによる外部からの採用を基本的に行いません。法律などの専門家は別として、通常のビジネスオペレーションの社員の大半は、大学、もしくは大学院を卒業して新卒で入ってきます。新卒ではない社員も当然いますが、入社条件は基本的に新卒と同じです。この中から、リーダーになれる人物を見極めて、育てるのはとても大切な仕事です。そして、彼らが入ってきた時は、まだ何もわからない真っ白なところからスタートしますので、スキルを身につけポジションをあげると同時に、彼らの視座をあげていく必要があります。

森田:日本以外の国の多くでは、ローカルスタッフのジョブホッピングは当たり前で、仮に育ててもちょっと給料が高いところが他に見つかると、すぐに転職してしまうので、ローカルスタッフは育てても仕方がない、という声がよく聞かれます。これは桐山さんが就職した当時の日本とは、転職に対する考えた方が、その当時は少し違うかもしれませんが、そのあたりはどうお考えになりますか。

人が辞めるからこそ、育てる

桐山:P&Gでも毎年、新卒・中途採用を問わず多くの新入社員が入ってきます。先ほど説明した様に、新卒でも中途採用でも新入社員としての条件は同じです。また、組織は勿論ピラミッド型ですので、数年後には様々な理由により社員が退社し、ナチュラルに人は流動していきます。退社後は多くの皆さんが、様々な会社や持ち場でご活躍されています。よく人材投資やトレーニングの話をする時に聞かれます。せっかく育てた人達が数年後には会社を去っていく・・・もったいないとは思いませんか?ってね。

確かに考えようによってはもったいない、無駄な投資にみえるかもしれませんね。でも我々が思うのは・・・いずれ辞めてしまうから育てても仕方ないなどと、ちっちゃいことを言っていたら、本当の育成なんてできないと言う事です。育てた人間の大多数は居なくなる、それをわかった上で、仮にP&Gを辞めた人が、他でも十二分に活躍できるぐらいの育成をやらなければ、本体に本当に洗練されたリーダーが残らないと思いますね。 また、ポテンシャルのある人材も集まって来ないと思います。

人が辞めるからこそ、育てるんですよ。一番大切なのは、どういう人が残るか。みなさんはどういう人を会社に残したいですか?楽をしたい人にとって居心地のいい、そういう人ばかりが残るような会社にしたいですか?そうではないはずです。一番洗練されている人が残るような仕組みにしなければいけないと思います。

ひとりひとりが、縁あって会社に入ってきてくれています。今のP&Gにもこれから成長が楽しみな素晴らしい人材が集まっています。みんな切磋琢磨し、成長していきます。その後、様々な理由で多くの人が会社を去って行きます。でも残る人もいますよね。この残った人達が、重要なリーダーシップポジションでしっかりとパフォーマンスを出してくれる。そして、次のリーダーを育ててくれる。このサイクルがきちっと回っていく事が重要だと思います。その為には、自分の力を自分が思っていた以上に発揮させてくれるようなストレッチなアサイメント、タフですが、そういった環境を与えてあげる事。そして、リーダーが次のリーダーをしっかりと育てると言う風土と責任が欠かせないと思います。

森田:そうですね。辞めるからこそ、育てるんですね。国籍や人種に関わらず、残したい人物にはしっかりと「育成という投資」をすることですね。

そして、その育成のポイントは、以前にも話があった「ストレッチアサインメント」。

特に、成長意欲が高くすぐに辞めそうな人ですら、残りたくなるような、成長できる場や機会を与え続けられれば、優秀な人が残り、そうでない人は居心地が悪くなりますね。逆に、そういう機会が与えられなければ、成長意欲がある人から辞めてしまい、意欲のないゆでガエル的な人ばかりが残る組織になってしまいますね。

これらのグローバルレベルでの人事改革は、アメリカの超ドメスティックだった頃、ローカルスタッフだった日本の社員他、各国のスタッフに向けてP&Gがおこなった英断であり、P&Gがその後、押しも押されぬグローバル企業になった、大きな要因のひとつではないかと思います。

それでは次回は”日本企業の未来に”と題して、日本人としては初の、P&G米国本社プレジデント、そしてアジア最高責任者まで上り詰めた桐山氏が、これからの日本企業に求められていること、そして、グローバルで活躍するためのリーダーシップ”についてお伺いしたいと思います。

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