日本人と英語:苦手意識の要因と克服への3つのステップ

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「英語は好きです。でも苦手です」という人がいます。

ある程度TOEICの点数は持っていると、「すごい!英語得意なのですね?」と言われたりしますが、「いや、話すのは得意ではないですけど・・・」と急に恥ずかしくなったりします。

英語は好きで勉強をしていても、それが使うことを目的にしていない場合、往々にしてこのような状況が生まれてしまいがちです。

しかし、実践力を目的とした英語トレーニングを積み重ねても、どうしても英語力が伸び悩むことがあるのは、なぜでしょうか。

単純に勉強不足によるものとも考えられますが、それ以外に日本人が持つ英語への苦手意識、英語でコミュニケーションを行うことへの不慣れさがあるのではないでしょうか。

日常英語に触れる機会は増えているものの、苦手意識によって伸び悩んでいる人は多いようです。

この記事では、その苦手意識が生まれる背景を知ってもらい、いくつかの克服方法を実践することであなたの英語力向上の一助になれることを願っています。

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目次:

1.日本人は「英語」が苦手?

2.日本人が持つ英語への苦手意識

2-1.文化的要因
2-1-1.恥の文化
2-1-2コンテクスト文化の差

2-2.心理的要因
2-2-2.完璧主義(思い込み)
2-2-3.白人への強い憧れ

2-3.教育法的要因
2-3-1.画一化(みんな一緒)と村八分
2-3-2.間違いを正す教育(減点方式)

3.苦手意識は克服できる:3つのステップ
3-1. ステップ1:苦手意識を理解する
3-2 .ステップ2:苦手意識と対話する
3-3 .ステップ3:意識的・実践的に克服する

4.まとめ
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1.日本人は英語が「苦手」なのか?

そもそも「英語が苦手」というのは、どういう状態なのでしょう。

「私は英語が苦手です」と言うとき、よくあるニュアンスとしては、

・上手く発音することができない
・流暢に話すことができない

という「音」に関する内容が多く含まれているように感じます。

例えばrとl、bとv、hとf、またthなど、確かに日本語にはない音を聞き取れないことでコミュニケーションが上手くいかず、やきもきした経験はあるはずです。

そして、よく英語が「できる人」と「できない人」と、発音の流暢さ(流暢のように聞こえる発音)だけで極端に判別してしまう人がいます。

ちなみに、他のノンネイティブスピーカーは、そのような言語の違い、発音の違いなど気にせずにコミュニケーションを取っているのであり、むしろ、その現地に根付いた訛りのある英語が、なぜ分からないのかと言わんばかりに話しかけてくる国もあります。

日本人に関しては、音の違いによるテクニカルなことも一因もさることながら、どうしても英語コミュニケーションに対する苦手意識を拭うことができずにいます。

ここでは、なぜそのような苦手意識が生まれてしまうのか、また、どのようにその苦手意識と向き合っていくと良いのかお伝えしていきます。

2.日本人が持つ英語への苦手意識

そもそも、なぜ日本人は英語でのコミュニケーショにこんなにも苦手意識を持ってしまうのでしょうか。

原因は様々考えられると思いますが、ここでは大きく3つの要因に分けて考えてみます。

・文化的要因
・心理的要因
・教育的要因

ちなみに、これらの要因が単独で作用しているというより、折り重なって複合的に作用していると考えています。

2-1 文化的要因

よく「英語が出来ないこと」とともに「日本人は〇〇だ」と言われることがありますが、この〇〇がまさに文化的要因を示しています。

文化的要因だけでも複雑に絡み合っているとは思いますが、日本文化として表される「恥の文化」や「村八分」なども、苦手意識に少なからず影響を与えていると考えています。

2-1-1 恥の文化

「恥の文化」という言葉は、アメリカの文化人類学者である、ルース・ベネディクト氏が『菊と刀』という著書の中で使っている言葉です。

彼女は、本書の中で「恥の文化」を、西欧文化の「罪の文化」と比較して、次のように説明しています。

日本文化=倫理基準を外部(世間体・外聞)に持つ「恥の文化」
西欧文化=倫理基準を内面に持つ「罪の文化」

この説明のように、日本文化は、他者の評価によって自分の善悪が決まりやすいと特徴付けており、無意識的に他者の目を「恥ずかしさ」と感じやすい環境下に置かれているのです。

これは、多神教である日本では、「神の目」より「他人の目」に重きが置かれてきたことに由来します。

一方で欧米などのキリスト教信者が多い国に関しては、逆に「罪の文化」と言い、彼ら彼女らが気にするのは「他人の目」ではなく、「神の目」であるため、日本人以上に過度に「恥ずかしさ」を感じにくいと考えられます。

英語の話に戻すと、特に実践的な英語力の向上には「使う」ことが大前提ですが、この「恥の文化」が浸透している文化圏では、発言することに自体躊躇してしまいがちな傾向があります。

つまり、英語を使うということに対する羞恥心が、日本人の英語力向上を阻んでいる要因となってしまっています。

2-1-1 コンテクスト文化の差

日本人のコミュニケーションは、極端にハイコンテクスト文化に帰属すると言われます。

ハイコンテクスト文化(高文脈文化)とは、実際に言葉として表現された内容よりも言葉にされていないのに相手に理解される(理解したと思われる)内容のほうが豊かな伝達方式であり、その最極端な言語として日本語を挙げている。

出所:wikipedia 

日本はこれまで単一民族であった背景もあり、異文化の人とのコミュニケーションが比較的少なく、言葉にしなくても分かる、分かってもらえる高次元なコミュニケーションが生まれました

しかし、現代のグローバル化社会で求められていることとは、受験英語ではなく、多様な人とコミュニケーションを図るための実践的な英語です。

はっきりと自分の意見を言わなければ伝わらず、日本語の「以心伝心」や「阿吽の呼吸」などのハイコンテクスト文化的なコミュニケーションは、残念ながらグローバルな現場ではくみ取られないことが多いです。

以下は、各国のコンテクスト文化の違いです。

参照:『異文化理解とコミュニケーション〈1〉ことばと文化』本名 信行他

はっきり物事を言われたり、また発言を求められるなどに慣れていない人は、尻込みをしてしまうこともあるでしょう。

このようなコンテクスト文化の違いが理解しないまま、英語そのものの学習だけで、いざコミュニケーションを取ろうとすると、意思疎通ができないことに気づき、苦手意識に変わってしまいます。

このコンテキスト文化の違いを認識しているだけでも、コミュニケーションを取るにあたっての心構えとなります。

2-2 心理的要因

文化と心理は切り離せない要因ではあるかと思いますが、特に日本人の傾向として、英語学習に対してよく見受けられる「思い込み」や「べき論」を見てみましょう。

そのような「思い込み」や「べき論」が英語力向上の弊害になっていることがあります。

2-2-1完璧主義

完璧な英語を使わないといけないのではないか、という思い込みは日本人が英語を使用しようとするときによく見られます。

日本人のものづくりへのこだわりや、洗礼されたおもてなし文化などは、世界に誇れるものでありますが、多様性の中において英語でコミュニケーションを取る場合は、時としてそれは弊害となることがあります。

先に触れた「恥の文化」においては、完璧でないことによって羞恥心を感じてしまい、積極性が阻害されてしまうこともあります。

ところで、「完璧な英語」とは何でしょうか。

文法を間違えないようにすることでしょうか。あるいは、アメリカ人やイギリス人のような流暢な発音をすることでしょうか。

今や第二外国語として英語を使っている人口の方が多い中で、完璧な英語は存在しません。

むしろ、相手の意見・意向がくみ取れるか、自分の伝えたいことがきちんと伝えられているかどうかが、少なからず私たちが求める「完璧の基準」になるのではないでしょうか。

2-2-2 白人への強い憧れ

白人への強い憧れは、日本の社会にとても浸透しているように感じます。

「外国人とは?」という質問に対して、パッと白人を頭に浮かべる人が多くいます。

私たち日本人は東洋人でありながら、白人の容姿に憧れてしまいがちです。

では、なぜ白人コンプレックスが英語学習の影響を及ぼし得るのでしょうか。

一つは今まで述べてきたように、白人が話すような英語が完璧、全てだと思ってしまうという思い込みが生まれてしまいます。目指すべきは白人のネイティブイングリッシュと。

それはネイティブスピーカーだけではなく、白人が話す英語のように話さないといけないという心理が働いてしまい、それを基準に「完璧」を目指し始めてしまいます。

また、私たちは心理的に尊敬する人や崇拝している人とコミュニケーションを取るとき、萎縮してしまう傾向があります。

白人に対してはコンプレックスとともに、崇拝気味になることで、対等にコミュニケーションを取ることを難しくしていまします。

同時に、崇拝し萎縮することがある一方、完璧な英語だと思っていない人、例えばアジア人などに対しては、いきなり強気になる日本人がいます。

確かに、アジア人とは比較低親しみやすさがあることは事実でしょう。

しかし、人によって対等なコミュニケーションが取れなくなってしまう心理は、英語学習以前に修繕しないといけません。

このように、あなたにも白人への憧れが意識的に刷り込まれていないか、一度見つめ直してみてはいかがでしょうか。

2-3 教育法的要因

2-3-1 画一化(みんな一緒)と村八分

日本の教育では、どうしても画一的(みんな一緒)になりがちです。

欧米人は個人主義的と言われるのに対し、日本人は集団主義的であると通説的に言われてきました。

どの社会も個人主義的要素と集団主義的要素も持ち合わせていると言われますが、少なからず日本社会には集団主義的要素を多く含んでいると考えられています。

ここでは二つの要素について深い議論をするわけではなく、集団主義的社会の中では、画一性(みんな一緒)が保たれ、他のメンバーからどう思われるかを気にするようになります。

そして、画一性を揺るがすことがあれば、村八分が行われてしまいます。

村八分とは、村落(村社会)の中で、掟や秩序を破った者に対して課される制裁行為であり、一定の地域に居住する住民が結束して交際を絶つこと(共同絶交)である。

 出所:wikipedia

残念なことに、日本の英語教育においても、このような村八分的なことが見受けらます。

例えば帰国子女や留学後に日本に帰国した人が、いわゆる流暢なネイティブ発音を習得してきた際、その人は「よそ者」として見られます。

また帰国子女でなくとも、英語を必死に勉強している人が、少し流暢に話せるようになると、「何を気取っているのだか」と尊重の眼差しではなく、嫌悪感を抱いてしまう人がいます。

「日本では日本語を話す」という掟を破った人には、制裁が与えられる構造が残っているようで、これからのグローバル化社会ではとても大きな弊害となります。

「みんな一緒」という集団の掟があるため、もっと英語を上達させたいという人が無難になろうと、苦手意識にすり替えてしまうことは、とてももったいないとしか言いようがありません。

2-3-2 間違いを正す教育(減点方式)

日本の学校では、間違いを正す「減点方式」に偏りがちだと言われます。

この話は、先ほどの村八分とも関係しますが、ミスをして怒られている人間は、まわりからも同情の目で見られることがあり、いつの間にか変わり者扱いされてしまいます。

だからこそ、「ミスをしたくない」と過剰に意識してしまいます。同時に恥じたくない、仲間外れにもされたくない、といった恐怖がついてきます。

学校教育や仕事に限らず、様々なメディアを通じても、この恐怖心は日常的に煽られています。

様々な場面で、日本人の英語のダメな部分に焦点が当てられていて、変に「正しい英語」「完璧な英語」を覚えなければと、無意識に刷り込まれているように感じます。

これにより、恥をかくなら無難にこたえよう、自分の意見は間違えかもしれないから言わないようにしようと考えるようになってしまいます。

もちろんミスをして迷惑を掛けたら、怒られて当然のこともありますが、英語学習ではミスをしなければ伸びませんし、あなたが間違えたところで迷惑がかかることはほとんどありません。

苦手意識は、何度も間違いを直されるうちに醸成されてしまい、積極性が欠けてしまいます。

本来、英語学習では思いっきり発言をして、良ければ称賛され、間違っていたとしても意見が尊重されるような環境があれば、英語力やコミュニケーション力もぐんと伸びていきます。

3.苦手意識は克服できる

どうしても英語に伸び悩んでいる人は、教材選びや学習方法の問題に限らず、このように文化的・心理的・教育法的に長い年月をかけて醸成されてきた苦手意識が邪魔をしています。

このような私たちの中にある苦手意識は、どのように克服することができるでしょうか。

それは、

「苦手意識を意識的に苦手ではないと継続的に刷り込むこと」

です。

つまり、苦手意識を別な意識で凌駕することで、苦手意識は苦手意識ではなくなりそんなことかと思われるかもしれませんが、意識し続けることは簡単ではありません。

自分のちょっとした癖、アルコールや喫煙も、断とうと思ってもなかなか断つことができませんよね。

同じく、苦手意識を変えるためには、トレーニングが必要です。

発音などテクニカルな部分での苦手分野については、別の機会に譲るとして、ここでは上記のような英語自体への苦手意識要因の克服方法に焦点を当てていきます。

どのようなことを意識し、いかに既存意識を変えていけるかについて、いくつか挙げてみます。

3-1 ステップ1:自分の苦手意識を理解する

苦手意識の内容は人によって異なります。

ですので、自分が何に英語の何に苦手意識を持っているか理解することが初めの一歩です。

苦手意識の正体を明らかにすることで、あなた自身どのように向き合っていくべきかが変わります。

その正体を明らかにするためには、普段自分が無意識的に感じてしまうことや、過去に苦手意識のきっかけとなった経験を思い出してみましょう。

・英語となるとすぐに白人をイメージしてしまう
・間違っているのではないかと、発言することを控えてしまう
・積極的に外国人と話していたら友達から変人扱いされた

おそらくあなたが英語に苦手意識を持ってしまっている背景には、英語そのものだけではなく、このような背景があるのではないでしょうか。

まずは自分と向き合ってみることから始めてみてください。その次に、それぞれの既存意識に対してどのようにアプローチをするべきか考えていきます。

3-2 ステップ2:既存の苦手意識と対話する

既存の苦手意識も、これから変わろうとしている新しい意識もあなた自身です。

新しい意識を持って、苦手意識と対話をしていきましょう。

例えば、あなたが「英語となるとすぐに白人をイメージしてしまう」のであれば、心のどこかに「自分はネイティブスピーカーのように上手く話すことができないから苦手だ」と思っているのではないでしょうか。

その苦手意識を克服するためには、新しい意識をもって伝え続けなければいけません。

新しい意識として伝えられることとしては、例えば次のようなメッセージです。

  • 所詮、あなたも私も英語のネイティブにはなることはできません

  • 今、英語公用語化と言われていますが、世界にはノンネイティブスピーカーの方が多く存在していて、英語も一つではありません(アジア英語についてはこちら参照:https://globalleaderlab.com/asia-english

  • ネイティブのような流暢さがなくとも、意思を示して世界で活躍する人を知っていますか?

どのようなメッセージが響くのか、人によって違いますが、例えばセミナーや本を読むことで、しっくりくるメッセージに出合うことができます。

そのメッセージを書き留め、常に苦手意識を感じるときには、自分に言い聞かせ続けるようにしてください。

英語学習の際の苦手意識克服だけではなく、自分がどのような英語を目指し、どんな目的で英語を学習しているのか顧みるきっかけにもなります。

3-3 ステップ3:意識的・実践的に克服する

もし、あなたの苦手意識が「人の目を極端に気にすること」であるならば、まず自分自身と対話をした上で、実際に人の目を気にしてしまっていた自分を意識的かつ実践的に変えていきます。

意識を行動に変えていくためには、あなたの普段の生活にヒントがあります。

普段生活をしている中の行動が、人の目を極端に気にしてしまう苦手意識の要素として積みあがって形成されているため、その一つ一つの行動を意識して変えていきましょう。

例えばですが、あなたがよくセミナーなどに通う人であれば、大人数の参加者の中でいつも質問や発言したいことはあっても、「間違えることへの恐怖心≒人の目を極端に気にしてしまう」ことから手を挙げられずに終わってしまっていませんか。

別に聞いても聞かなくても良いかと思い、その場を後にすることがあるはずです。

このような機会を使って、「積極的に発言すること≒人の目を気にしない」ことを意識的に行う場としていくことで、正解や不正解云々を気にするのではなく、発言したかどうかを評価しましょう。

特に英語を使って外国人とコミュニケーションを取ることになれば、より発言は求められ、人の目を気にしている暇はありません。

人の目を気にしてしまう人が、その意識を克服するためには、セミナーや研修だけではなく、普段の生活、例えば電車の中でも実践できます。

お年寄りや妊娠している人が席を必要としている場面があれば、「人の目」ではなく「困っている人の気持ち」に意識を寄せて、声をかけるようにしてみてください。

誰かやってくれるという意識なのか、声を上げることで注目されることが嫌なのか、海外と比べて積極的に席を空けることがないように普段感じています。

このような意識が、実は日本人の英語学習においても見られることであり、英語でのコミュニケーションに対する苦手意識の種となっているのではないでしょうか。

苦手意識と向き合い、どのように新しい意識をもって行動するべきかしっかり自分自身と対話した上で、実際に行動することで苦手意識を克服していきましょう。

4.まとめ

苦手意識は、英語学習のタイミングだけではなく、普段の生活において作られています。

日本人は英語が苦手だと常套句のように使われていますが、もともと日本人は本当に英語、ひいては語学が苦手だったのでしょうか。

英語に触れることが圧倒的に多くなった現代と、過去を単純に比べることはできませんが、便利さの無い時代、また村や地域の掟が厳しかった時代にもかかわらず、英語に堪能だった日本人がいたことは事実です。

日本人は英語苦手説が流布していますが、英語自体が苦手というより、これまでの社会的・文化的背景、そして心理的な弊害が絡み合って苦手意識が作られているだけのように感じます。

英語学習においては、単なるスキル向上だけではなく、あなたの心にある苦手意識の要因を認識し、意識的にそれを克服することを是非心がけてみてください。

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本多功一

本多功一

上智大学大学院卒業後、人材業界で新卒採用の実務管理システム事業に携わる。その後、半導体・電子機器等を扱う大手専門商社で、採用・研修担当として人事業務を経験して現職。学生時代から日本と海外の高校生留学支援や途上国の教育支援活動に携わるなど、一貫して「人」に関する課題に注力。現在は、自身の留学経験やこれまでのビジネス経験を通じて、「日本人の目指すべきグローバル人材の姿と役割とは」を最大のテーマに、語学や異文化理解の分野で人材育成や能力開発に力を入れている。
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