アジア英語の魅力と学ぶ意義 ~アジア英語が注目される背景とメリット~

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アジア英語と聞くと、どのようなことを思い描くでしょうか。日本の学校で教える英語は、アメリカ英語やイギリス英語が主流となっていますが、フィリピンとつないだオンライン英会話や低コストで行けるアジア留学などが広がり、アジアで英語を学ぶことがより日常的になってきました。

ちなみにアジア圏内の英語事情はご存じでしょうか。参考までに世界最大の英語能力ランキングと言われている「EF EPI」の結果とTOEFLスコアの結果は以下です。

<アジア圏 国別ランキング>

「EF EPI」 「TOEFL」※抜粋

参考:http://www.efjapan.co.jp/epi/
参考:https://www.ets.org/s/toefl/pdf/94227_unlweb.pdf

これらランキングが全てではないですが、実際にシンガポール、インド、マレーシア、フィリピンに行くと、市場のおじちゃんでも英語で話しかけてくれるように、現地の人の英語力は高いことは間違いないようです。

この記事では、改めてアジア英語が注目される背景と、アジア英語の良さ・魅力や学習することのメリットに触れていきます。

ーー目次ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

1.アジア英語が注目される背景
1-1 アジアへの進出企業の増加
1-2 アジア発のノンネイティブリーダーの存在
1-3 求められているのは「伝わる英語」

2.アジア英語を学ぶメリット
2-1 英語の多様性を再認識し、視野が広がる
2-2 現地の人との親近感がより深まる
2-3 アジアと日本を顧みる機会となる

3.様々なアジア英語を知る
3-1シンガポールの英語
3-2マレーシアの英語
3-3フィリピンの英語
3-4インドの英語

4.まとめ

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1. アジア英語が注目される背景

アジア英語が注目されるそもそもの背景の一つには、アジアマーケットへの注目があります。人件費の比較的安いアジアでは、ビジネスチャンスにつながると踏んだ日系企業が増えたことが最たる理由です。オンライン英会話やアジア語学留学のプランが増えたことも、その結果でしょう。

その他強いて言えば、英語を母国語としないアジア発のノンネイティブリーダーたちが国際舞台で活躍していることや、英語を母国語しない人の割合が多い世界で、グロービッシュや「伝わる英語」の重要性が取り上げられてきたことに起因していると考えます。

1-1 アジアへの進出企業の増加

近年の日系企業の海外進出比率を見てみましょう。

『海外在留邦人数調査統計(平成28年要約版)』(外務省領事局政策課)
「国(地域)別(上位11ヵ国)日系企業(拠点)数」

1.中国
2.米国
3.インド
4.ドイツ
5.タイ
6.インドネシア
7.ベトナム
8.フィリピン
9.マレーシア
10.台湾
11.シンガポール

日系企業が海外進出をしている国別ランキングでは、今注目されているインドや東南アジアの国々を含む、9つのアジア諸国がトップ11に入っています。

日本とアジアの接点が深まる中、やはりコミュニケーションを取る手段は英語です。特にインドやアセアン諸国は、益々の人口増加が予測されることなどから、ビジネスサイトとして益々注目されてきています。

まだまだ日本でアジア英語学習を推進している学校や企業は少ないかもしれませんが、オンライン英会話を導入したリアル学習を導入しているところは増えてきているように感じます。このようにアジアマーケット拡大に伴って、今後はよりアジア英語に触れる機会が増えることが予測されます。

1-2 アジア発のノンネイティブリーダーの存在

世界で活躍するアジアリーダーたちのスピーチを通して、もしかしたら様々なアジア英語にはじめて触れた人もいるかもしれません。

例えば、ミャンマ―出身のアウンサンスーチー氏の英語は、多少のなまりはあるものの、とても流暢且つ聞き取りやすい英語でスピーチをしています。

また、EFやTOEFLスコアが最も高かったシンガポールを代表するリー・シェンロン首相のスピーチがあります。彼はケンブリッジ大学やハーバード大学で学んだ経歴を持っていますが、英語は強いなまりと独特の表現のあるシングリッシュです。

更に、今はインド人リーダーがIT産業で世界企業を引っ張っています。Google社のサンダー・ピチャイ氏などの英語も、きれいな英語ですが、アメリカ人やイギリス人とは大きく異なります。

最後に、日本を代表するソフトバンクの孫正義氏のスピーチも、なまりのあるアジア英語の一つです。

世界で活躍するリーダーたちのなまりのある英語は、アジア英語のプレゼンスを高めるものとなります。

1-3 求められているのは「伝わる英語」

英語は世界公用語と言われますが、英語を第二言語として使用している人が多いように、アメリカ英語やイギリス英語が公用語になっているわけではありません。もちろん、基本的な単語や文法、発音などの基礎力は必要ですが、今求められるのは「伝わる英語」です。

アジア留学の目的がTOEICスコアを上げることであれば話は別ですが、アジアマーケットでビジネス拡大を図るのであれば、アメリカ英語よりもアジア英語を理解することの方が有効的です。これはアジアに限った話ではありませんが、日本人の多くは、英語と言えばアメリカ英語やイギリス英語などの「ネイティブ英語」をどうしてもイメージしがちです。

今では、第二言語として英語を使っている人口が多いように、コミュニケーションを円滑にするためには、ネイティブスピーカーがノンネイティブスピーカーに分かりやすく伝えるべきという認識も出てきています。このような認識もあり、ネイティブ英語だけではない、アジア英語が注目される理由となっています。

2.アジア英語を学ぶメリット

それでは、アジア英語を学ぶメリットを考えてみましょう。メリットには、単なる英語力の向上だけではなく、アジア英語学習を通してこそ得られるものがあります。

2-1 英語の多様性を再認識し、視野が広がる

アジア英語を学ぶことのメリットは、英語の多様性を再認識し、「ネイティブ信仰」の呪縛から解放されるきっかけとなります。多くの日本人は「英語=アメリカ英語」と認識しており、人によってはなまりのある英語は受け付けないという場合もあります。

しかし、先に述べたように、英語を母国語としない人口の方が圧倒的に多く、英語にも多様性があることを理解することは重要です。もし、あなたが求めているものが「アメリカ人と雑談するための英語」、あるいは「イギリス人と交渉するための英語」であれば話は別ですが、少なからず「アジア英語」で検索している限り、目的は別なところにあると考えています。

グローバル化が加速する中求められることとは、ネイティブ英語を完璧にすることではなく、多種多様な人といかにうまくコミュニケーションを取り、異質なものを受け入れる適応能力です。これまであまりアジア英語になじみのない人にとっては、アジア英語を学習することは、多様さに触れる良いきっかけであり、自身の視野を広げることにつながります。

2-2 現地の人との親近感がより深まる

アジア圏の現地の人とのコミュニケーションに限りませんが、やはり現地語ができることと同様に、その人たちが普段慣れ親しんでいる言い回しや表現を使うことで、距離感の縮まり方は異なります。

例えば、シンガポールで使われる「シングリッシュ」では、語尾に「ラ~(lah)」や「マ~(ma)」などをつけて会話することがあります。これは、日本語でいう「~ね」などに当たります。

例:“OK lah?” (OKね)
例:“You already eat ma?”(もう食べた?)

このようにシンガポールは、中国語やマレー語、タミル語が公用語化されており、それらの言語が混ざった形で、独特の英語「シングリッシュ」が生まれました。このようにその地域の英語の特徴を理解することによって、コミュニケーションを取るにあたってより親近感がわくはずです。

2-3 アジアと日本を顧みる機会となる

繰り返しになりますが、日本の英語教育の見ている限り、西洋文化へのあこがれが強く、目指している先の多くは欧米に向けられています。西洋文化への憧れが悪いことなのではなく、その憧れが強過ぎてしまうことによって、アジア文化・東洋文化に対する感情や考え方が偏見的になってしまいがちです。

このことは、アジアの一部である日本人としてのアイデンティティさえも否定することにつながりかねないという問題意識があります。グローバル人材育成や異文化理解の重要性という言葉は蔓延していますが、日本人留学生や駐在員の中には、まだまだ脱亜入欧的考えを持ち、アジア人に対して軽視・軽蔑してしまう人がいます。

これから益々アジア諸国の人とのコミュニケーションが増えることが予想される中、日本がアジアの一部であることを忘れて「一緒にされたくない」という感情を持っていれば、良い関係構築をすることはできません。アジアで英語を学ぶことやアジア英語を学ぶことは、アジアと日本を別枠として捉えるのではなく、日本はアジアの中にいることを顧みるきっかけとなります。

このような観点から、日本人がアジア英語を学ぶことで得られることは大きいと考えます。

3.様々なアジア英語

実際にどのようなアジア英語が存在するでしょうか。

ここではいくつかのアジア諸国をピックアップして、その国で使われている英語の特徴を紹介します。

3-1.シンガポールの英語

先に触れた英語力ランキング表のように、シンガポール人の英語能力はとても高く、小学校の授業から英語で行われています。

多民族国家であるシンガポールでは英語のほかに、中国語、マレー語、タミル語が公用語であり、それぞれの言語が入り混じった形で、シンガポールの英語である「シングリッシュ(Singlish)」が成り立っています。そのため、語尾につける「ラ~(lah)」や「マ~(ma)」などは、中国語の影響を受けたものと言われています。例えば、「ラ~(lah)」は現在完了形である「了」、「マ~(ma)」は疑問形である「吗」から来ています。

また、シングリッシュでは、単語と単語の発音が短く省略され、音としては鋭くなります。例えば、”car park”のことを”cappa(カッパ)”のように聞こえます。正しい文法にこだわりの強い日本人は、主語の省略や単語オンリーで会話が成り立つシングリッシュに戸惑うこともあるはずです。特に“Can”は、二回続けて「キャンキャン」で強調となったり、それだけで会話する場面に遭遇したときは驚きました。

このように、アメリカ英語よりも音や文法などはシンプルになることが多く、日本人にとっては聞き慣れるまでに時間はかからないはずです。

3-2 マレーシアの英語

人口の大半がマレー系であるマレーシアでは、英語が実質的な共通語として使用され、マレーシア人の英語能力も世界的にもアジアトップクラスと知られています。

シンガポールの隣国、マレーシアでもマレー語や中国語が混ざったような「マングリッシュ」が存在します。シンガポールのシングリッシュのように、やはり語尾につける「ラ~(lah)」や「マ~(ma)」などが特徴的です。文法などはほぼ気にせず話したりする点についても、シングリッシュと似ているところは多いでしょう。

また「マングリッシュ」は、シングリッシュ以上に他の言語、特にマレー語をそのまま使用する場面が多く、聞き取れないことが多いかもしれません。例えば“makan”というのは、マレー語で「食べる」を意味し、次のように使われます。

“You makan dy?” (マングリッシュ)
“Have you taken your dinner?” (イングリッシュ)

参考:https://en.m.wikipedia.org/wiki/Manglish

マレーシア人全員がこのようなマングリッシュを使用するわけではないですが、やはり語尾に「ラー」がつくだけでも、やわらかい印象を相手に与える英語であり、国民性が反映されているようにも感じます。マングリッシュはアジア英語やアジア英語の学習を通じて国民性を感じるのには、とても興味深い英語ではないでしょうか。

3-3 フィリピンの英語

GDP成長率6%という急成長を遂げているフィリピンですが、その理由にはやはり「英語ができる人材の多さ」という要因が考えられます。

フィリピンでは、フィリピン語(タガログ語)とともに英語が公用語として使われています。フィリピン人の英語水準も非常に高く、小学生から国語以外はほぼ英語で授業が進められます。フィリピン英語は、歴史的背景などから基本的にアメリカン英語に基づいていますが、シングリッシュやマングリッシュのように、タガログ語が交じったタグリッシュ (Taglish) もよく耳にします。

フィリピン英語の特徴の一つには、音の変化があります。例えば、[f]音が[p]音になったりします。

Filipino = [pili’pino](ピリピーノ)

多少の音の変化はあるものの、マングリッシュのようにマレー語が途中で挟まることは少なく、英語とフィリピン語は分けて話されることが多いです。また、国民性からかフィリピン人の英語はそんな早口で話されないため、日本人にとっても聞き取りやすい英語の一つではないでしょうか。

このような理由からオンライン英会話として、フィリピン人が抜擢されるということは納得します。

3-4 インドの英語

最後はインド人の英語です。ヒンドゥー語の発音のクセが残っていたり、抑揚が少ないことで知られるインド英語は、「ヒングリッシュ」とも呼ばれます。早口に話すことなど、これまでの触れてきた三か国の英語とは、「穏やかさ」という意味では異なります。

よくインド人と日本人が比較されるジョークがありますね。

「国際会議において有能な議長とはどういう者か。それはインド人を黙らせ、日本人を喋らせる者である」

このように、インド人の多くは自分たちの英語にとても自信満々で話してくる印象があります。背景としては、インドに存在する言語や宗教、文化の多様性のある環境があり、その多様性の中で自分たちの存在をいかに主張していくかが重要とされ、英語を使ったコミュニケーションが盛んに行われているためです。

また、インド英語の特徴として顕著なのは、やはりローマ字読みする発音ではないでしょうか。特に[r]の音は、はっきりと発音します。

“car”(カール)
“park”(パルク)
“four”(フォール)

よく日本人で、インド人の英語は聞き取れないと言われるように、確かに聞きなれない単語が弾丸のように早口で降り注がれると、慣れるのには容易ではないかもしれません。

ただし、先に述べたようにインド人の世界的リーダーが増え、インドのプレゼンスが増す中においては、インド人の話すアジア英語とどのように向き合うかは重要さが増していくかもしれません。

4 まとめ

アジア英語という切り口で、その注目される背景や特徴に触れてきましたが、いかがでしょうか。

ここではアジア英語のごく一部をご紹介しましたが、その他のアジア諸国にはさらに多様な英語が存在しています。あなたがこの記事を通して、アジアの英語、そして世界に広がる英語の多様性に、少しでも興味を持っていただけたら幸いです。

繰り返しになりますが、アジア英語を学ぶことは、単に注目されるアジアマーケットの人とコミュニケーションを取るだけに限りません。アジアの一国として日本の存在意義を再認識することや、アジアへの理解を深めていくことのきっかけになると信じています。

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本多功一

本多功一

上智大学大学院卒業後、人材業界で新卒採用の実務管理システム事業に携わる。その後、半導体・電子機器等を扱う大手専門商社で、採用・研修担当として人事業務を経験して現職。学生時代から日本と海外の高校生留学支援や途上国の教育支援活動に携わるなど、一貫して「人」に関する課題に注力。現在は、自身の留学経験やこれまでのビジネス経験を通じて、「日本人の目指すべきグローバル人材の姿と役割とは」を最大のテーマに、語学や異文化理解の分野で人材育成や能力開発に力を入れている。

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