人材アセスメントのグローバル化。横並びの人材育成から選抜・抜擢へ。

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人材アセスメントとは、複数のシミュレーションや心理テスト、面接などを通して、受講者の行動、言動、態度などを客観的に観察し、社員の人材配置や昇進、抜擢に活用する人材手法のことを指します。

人材アセスメントが日本に導入され始めたのは1975年頃とされており、企業内での人材育成に活用され始め、三十数年経過している為、実際に研修で導入されたことがある方や、自身が受講されたことがある方が多いのではないでしょうか?

これまでの人材アセスメントは、日系企業の日本人のみを対象とした人材アセスメントが主流でした。

しかしながら、少子高齢化の流れにおける企業内での人材不足、優秀な社員を全世界から調達するグローバル化の流れから、人材アセスメントの基準もグローバル化が迫られています。

本記事では、これまでの人材アセスメントの流れや背景を理解すると共に、人材アセスメントをグローバル化の時代に応用していく手法についても見ていきましょう。

ーー【目次】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

1.人材アセスメントが生まれた背景と歴史
2.企業内でなぜ、人材アセスメントが必要なのか?
3.人材アセスメントの効果
4.海外現地法人における人材アセスメントのポイント
4-1. アセスメント基準の明確化
4-2. 評価者の「目合わせ」と「目利き」
4-3. 抜擢人材の活用法
最後に

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1.人材アセスメントが生まれた背景と歴史

人材アセスメントが生まれた背景をご存知でしょうか?
人材アセスメントは、第1次世界大戦後のドイツが発祥と言われています。

第1次世界大戦を戦い敗れたドイツでは国家再建が急務でした。その際、従来の軍の在り方に大きな反省が芽生えたことがきっかけです。

中世の制度を引き継いでいた大戦前のドイツでは、軍の強弱を決定すると言われる将校クラス以上はほぼ例外なく貴族階級出身でした。

つまり、集団を率いる将校(リーダー)の素養とは、生まれながらの素質と環境に依存すると考えられていました。

この常識を疑うことから軍制の改革の始まりです。

そこで、平民出身の将校候補と貴族階級出身の将校候補を、将校として望ましい行動をとれるか否か、いくつもの演習を通して観察・評価し、選抜したと言われています。

この結果が、その後のドイツ軍の強さにつながったのではないかと考えたのが、第2次大戦を戦ったアメリカです。

この考え方とシステムをアメリカが自国に持ち帰り、さらに心理学・行動科学といった検証を経て、まずは軍隊で、次いで政府機関で、あるポスト以上の人材の選抜方法として一般化されていったと言われています。

2.企業内でなぜ、人材アセスメントが必要なのか?

さて、日系企業におけるアセスメント研修について話しを戻しましょう。

人材アセスメントの手法が日本に導入され始めたのが1975年頃とされており、次第に企業内での人材育成でも活用されるようになりました。

日系企業は、「終身雇用」「年功序列」「企業別組合」をベースにこれまで経営しており、新卒一括採用で、社員には会社にコミットすること(貢献すること)を求められてきました。コレが日本型経営の原点です。

しかし、日本市場における少子高齢化、労働人口の減少、経済のグローバル化に伴い、国際競争力が激しさを増す中、優秀な人材確保の重要性は年々高まっています。

日系企業だから日本人のみを対象とするとするのではなく、グローバル最適で国籍など関係なく人材を調達し、グローバルワンカパニーとして、戦略人事を実行する必要性から、グローバル基準での人材アセスメントが注目されているのです。

3.人材アセスメントの効果

次に人材アセスメントの効果について見ていきましょう。

人材アセスメントの効果は、第三者の客観的な評価(視点)を踏まえて、社員の昇進・昇格時の選抜、適切な人材配置、人材育成に活用できる点です。

ただ、人材アセスメントの手法は多岐に渡るため、実施する目的を明確にしておく必要があります。

また、アセスメント基準(ディメンション)は、選抜後、その社員の育成にも繋がっていきますから、人事制度の能力要件とも紐づけておくことをお勧めします。

あくまでも人材アセスメントは、評価することが目的ではなく、正しい評価基準で社員を評価・抜擢し、その後のポジションでその社員が能力を発揮し成果を出していくことになりますので、長期的な人材育成施策を見据えて実施する必要があります。

4.海外現地法人における人材アセスメントのポイント

先に述べたようにアセスメント基準のグローバル化により、日本本社だけではなく、海外現地法人でも人材アセスメントの必要性が増しています。

私が組織・人事コンサルティングをメインで行っている在タイ日系企業でもその動きは起きてきており、ローカル人材に権限委譲をしていく為、優秀なローカルスタッフの抜擢と育成は大きな課題となっています。

しかしながら、海外現地法人では、マネジメント経験及び人事経験があまりない中、赴任されていらっしゃるケースも多々あります。

最後に、海外現地法人における人材アセスメントのポイントについて見ていきましょう。

4-1. アセスメント基準の明確化

まず、国籍など関係なく平等に抜擢・育成する機会を創るため、どういう人材を抜擢するのか、具体的な能力要件・スキル・スタンスを明確化し、グローバル基準でのアセスメント基準(ディメンション)を明確にしておく必要があります。

マネジャー・リーダーに求められる能力は、ハーバード大学のロバート・カッツ教授の下記の3つのスキルに照らし合わせて整理することを推奨しています。

1)テクニカル・スキル(ビジネス専門性スキル)

テクニカル・スキルとはある特定の仕事や技術における知識や熟練性のことです。

専門領域の能力、分析能力、適切なツールや技術を使いこなす能力などを含みます。特に技術系においては最も重要なスキルになります。

2)ヒューマン・スキル(対人関係能力)

ヒューマン・スキルとは、リーダーとして部下、同僚や上司と効率的に働くための対人関係能力です。

他者と協力し合いながら、目の前にある目標を達成に導くといったリーダーシップ、人を動機付けながら成果に導くマネジメントスキルなど他者の能力を活かしながら成果を出す能力です。

3)コンセプチュアル・スキル(概念化能力)

コンセプチュアル・スキルとはアイデアを考え抜いたり、問題構造を明確化し問題解決できる能力です。

戦略構築やビジョン策定などこの能力は組織の上位層の期待役割として求められる能力です。

よって、階層により求められる能力も変わってきますから、アセスメントする対象層によって整理していく必要があります。

4-2. 評価者の「目合わせ」と「目利き」

アセスメント基準を明確にした後は、実際に職場で評価をする評価者の「目合わせ」と「目利き」のトレーニングも必要です。

人材アセスメントは抜擢した後の育成と組織活性化に繋げていくことが重要ですから、社員を評価する評価者の基準がバラバラでは、抜擢後の評価でモチベーションを下げてしまう恐れがあります。

また、人材アセスメント基準を人事制度の評価基準とも整合させ、全社員にオープンにすることで、どういう能力が求められているのか、どういうスキルを強化するのか、成長意欲の高い社員へのモチベーション向上にも繋がります。

4-3. 抜擢人材の活用法

最後に抜擢人材の活用方法です。

あくまでも人材アセスメントは抜擢することが目的ではなく、その後育成し、組織強化を行うことが目的です。

よって、人材アセスメント後の活用ルートを明確にすると共に、その社員が挑戦できる環境が必要です。

また海外現地法人においては、ローカルマネジャーの今後の増員計画、日本人駐在員の推移、駐在員の権限をどこまで委譲するか、人事戦略を事前に練っておく必要があります。

タイを始めとするASEAN人材の若手層は、成長意欲が高く、自分の能力やスキルを高めることができる環境を求めています。若手の柔軟な発想を組織活性化に活かす施策が日系海外現地法人に今求められています。

最後に

日系企業だからと言って、日本人が主導で全て人材マネジメントを行う時代は終わりました。

日系企業がよりグローバルで成功するためには、グローバル最適で国籍など関係なく人材を調達・抜擢・育成していくこと、同時に各国の海外現地法人において、ローカルスタッフに対して権限委譲を促していくことが重要です。

横並びで平等主義の人事から脱却し、国籍関係なく若くても優秀な社員に成長できる環境を提供し、組織・人事のグローバル化・現地化を実現させていきましょう。

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増田 賢一朗

増田 賢一朗

新卒で、株式会社リクルートに入社。 入社1年目で同期の中で最短でMVPを取得。 2008年より株式会社シェイクに転職後、人材育成パートナーとして尽力する傍ら、 ファシリテーターや、 受講者の行動特性を分析するアセッサーとして多数登壇。 2016年より人と組織のグローバル化に貢献すべくbeyond global groupに参画し、beyond global (Thailand) Co., Ltd.をタイ バンコクに設立。 研究テーマは「次世代のアジアならではの強みを活かした組織変革・人材育成手法」と「タイ+1におけるHR戦略」

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