【海外現地法人向け】目標設定時にトップマネジメント・人事部が見るべき観点と仕組みづくり

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目標設定は、事業成長、組織運営において非常に重要な項目です。それにも関わらず、多くの海外拠点の人事部、トップマネジメントからご相談をいただきます。

例えば、

・等級に見合った目標を設定できていない

・そもそも評価できない目標設定をしている

・それにも関わらず、評価者がOKして、通している

・評価者も被評価者も「やらされ感」が漂っている

など、要するに「評価者も被評価者もうまく目標設定ができない」や「目標設定が評価のためのツールになっている」といった課題感をお持ちの企業様を多く見られます。

特に、今まで目標設定について注意されてこなかったローカル人材の場合、過去の事例を元に押し通したり、そもそも適切な目標設定方法を知らなかったりなど、多くの課題があるかと思います。

本来、目標設定とそれに対する評価、フィードバックによって、

・自分自身の成果に対して、振り返る機会を作り、自己成長を促進させる、  

・さらに組織にとって良い成果を残してくれた人たちには、報酬で報いる、  

といった意図を持って、目標設定を導入しようと考える企業様がほとんどだと思います。

また、組織を現地化していくためには、ローカルマネジャーが適切な目標設定を行えること、そして部下の目標を正しくレビューできることは必須条件です。

本来の目標設定と評価の目的、または組織の現地化へ変革させるためにも、組織的に適切な目標設定を行うことを徹底することは、不可欠です。

この記事では、組織的に適切な目標設定を行うために、人事部・トップマネジメントが見るべき観点、そして今後継続して、目標設定が適切に行えるようにするための仕組みづくりについて、ご紹介していきます。

最初に、組織全体(マクロ)としての目標設定・管理の考え方から、どう組織目標を個人目標へ落とし込んでいくのか?、次に各個人(ミクロ)の目標設定時に人事部・トップマネジメントが見るべき観点へ、順にご紹介していきます。

* 本記事でいう目標とは、成果目標(MBOやKPI、OKRなどで設定する目標)を指しております。

目標設定・管理の基本的な考え方

まず、最初に組織全体(マクロ)の視点から、基本的な目標設定・管理の考え方をご紹介します。

組織目標と個人目標が連結した目標設定・管理

目標設定をする際に、重要なことは組織目標と個人目標が連結しているかどうかです。

もし目標が連結できていない場合は、個人目標は達成しても、組織目標が達成できなかったという事態が発生します。

その結果、社員の評価点は高いが、昇給や賞与の原資を確保することができず、通常時の金額を採用できないことによって、社員の不満を高めてしまうことに繋がります。

そのため、マネジメント側で、組織目標と個人目標が連結した目標管理を行う必要があります。

よくある目標管理の間違いは、目標数値を単純に連鎖させて配分するだけ

特に、前述の状況を生み出すのが、「目標数値を単純に連鎖させて配分するだけ」の目標設定です。

理由は大きく2つです。

・戦略実行の柔軟性に欠けること

・そもそも組織目標を細部まで因数分解できるほど、単純なビジネスモデルが少なくなってきている、または市場環境が複雑化していること

目標数値をそのまま個人に落とし込むだけだと、その社員からするとこの数字だけを追っていれば良いんだという考えになります。

ただ、組織として市場環境の変化によっては、柔軟に指標を変える状況も発生します。

特にCovid-19の状況下では、いつどのタイミングで開国するのか?やビザの規制が強まったり緩和したりするかわかりません。そういった事態の中で、各社員が自分たちの目標数値を追うだけの組織運営は、リスクがあります。

では、どのように組織目標と個人目標が連結した状態を作り出せるのでしょうか?

数値ではなく、戦略を目標に落とし込む

目標数値だけを追うことの課題は、戦略実行の柔軟性に欠けることです。

要するに、「なぜその目標数値を設定したのか?」を理解せずに、ただその目標数値だけを個人が追っていることに問題があります。

そのため、組織目標と個人目標が連結した状態を作り出すためには、「なぜこの目標を追っているのか」を組織も個人も理解していることです。

つまり、戦略(進む方向性)を目標に落とし込むことが重要になります。

戦略を各チーム、個人に落とし込むOGSM

各チーム、個人に目標を落とし込む際、社内で共通認識を持つために、各組織・チーム内の戦略を明確しなければいけません。

そこで、戦略の明確化に便利なフレームワーク「OGSM」をご紹介します。

OGSMとは、

・Objective(目的・使命: 何のためにやるのか?)

・Goal(目標: どこまでやるのか?)

・Strategy(戦略: どうやってGoalを達成するのか?)

・Measurements(戦略の測定方法: 戦略がうまくいっているかをどうやって知るのか?)

から成り立ちます。

なぜその目標を追うのかから、その目標に対して、どう進めるのか?、そしてどの指標・数値から達成と言えるのかを明確に定義するため、マネジャーだけでなく、各社員が見ても組織の方向性を理解することができます。

これを組織、または各チーム・事業部で設定すると、各個人が何を達成しなければいけないのかを把握し、より組織目標と個人目標が連結した体制へ近づくことができます。

目標設定時に見るべき観点

組織全体の視点から個人の目標設定へ、より具体的な部分に対して、人事部・トップマネジメントが見るべき観点をご紹介していきます。

適切な目標設定を行うために、「What/When: 何の目標をいつまでに達成するのか?」を意識して、目標を確認してみましょう。

What/When: 何の目標をいつ達成するのか?

目標は、「現在の仕事の状態と、本来あるべき姿のギャップを埋めるために、何をしなければいけないのか」から考える必要があります。

ただ、軸がない状態で、目標を考えたり確認しても、抜け漏れがあるかどうかは、設定している本人やチェックする側も分かりません。

そのため、抜け漏れを防ぐためにも、目標設定の観点を2段階に分けて考えていきたいと思います。

1. バランススコアカードのカテゴリーを活用

まず、全体の目標設定のバランスや整合性を見る必要があります。

よく目標添削で見落としやすいのが、一見、適切な目標だと思いきや、全体のバランスや統合性から考えると修正が必要なパターンです。
マネジメント側から目標設定を行っていく会社であれば、全体感をズレることはありませんが、全員一斉に目標を考えていく場合は、組織と個人とで認識のズレがよく起こります。

そのため、組織内で共通言語となる目標のカテゴリーを決めておくことが、よりスムーズな目標設定と確認を行うことができます。

そのカテゴリーの参考になるのが、バランススコアカードのカテゴリーです。

バランススコアカードのカテゴリーは、下記の4つあります。

・財務(業績):各部門に課せられた業績目標を達成するように、チームをマネジメントする

・顧客価値:お客様や関連部門に対しての満足度を高める。価値提供の実践

・業務効率:目的を達成するプロセスを見直し、品質、効率、スピードなどを向上させる

・学習と成長:組織を構成し、将来を担う人材を育てる、人と組織が成長する風土を創る

これら4つの項目が、組織内、事業部内、チーム内でうまく連結し合っているか?を確認することで、全体的に抜け漏れがない目標設定へ変化します。

ここに関しては、人事部ではなくトップマネジメントクラスや現場のリーダークラスの方々が確認・管理する必要があります。

2. SMART(各目標の設定方法)

ここからは、目標の記述方法に抜け漏れがないかを見ていきます。

目標設定方法に抜け漏れがないかを確認する場合、SMARTというフレームワークが分かりやすく、明確な目標を記述することができます。

・Specific(具体的に)

誰が読んでもわかる、明確で具体的な表現や言葉になっているか?

・Measurable(測定可能な)

目標が測定することができる、数値・行動になっているか?

・Achievable(達成可能な)

希望や願望ではなく、その目標が達成可能な内容か?

・Related(組織目標に関連した)

目標と等級に紐づく役割・責任の整合性はあるか?

組織・チーム目標との整合性は取れているか?

・Time-bound(時間制約がある)

いつまでに目標達成するのかが明確か?

これらの2つのプロセスを踏むことによって、適切な目標設定・管理へ変わっていきます。

適切な目標を設定するための仕組みづくり

継続的に適切な目標設定を行うためにも、仕組みを作ることも大事になります。

仕組みの作り方は、各企業の人事制度運用によって、様々ではありますが、一例として、施策を紹介していきます。

目標精査会議を実施する

「目標設定時に見るべき観点」でも紹介したように、人事部だけやトップマネジメントだけ、現場リーダーだけで目標を設定しようとしても、それぞれの色眼鏡で見ようとするため、抜け漏れが存在してしまいます。

そのため、マネジャー以上の役職の方々と人事部で、目標精査会議を実施することも有効な施策の一つです。

コミュニケーションを取らずに、目標設定の承認プロセスを進めることは効率的ではあるものの、「なぜこの目標であるかについて」や、「各目標の関連性については中々理解しずらい」です。

そういった互いに理解していないことが、認識のズレに繋がり、戦略に一貫性がなくなってしまいます。

時間は要するものの、目標精査会議で各社員の目標について認識合わせする場は、組織にとては無駄な目標を追う必要がなくなるので、より効率的になるかもしれません。

目標共有範囲を広げる

「目標設定・管理の基本的な考え方」の中でもご紹介した通り、戦略を各目標に落とし込んでいくことは、「なぜその目標を追っているのか」を理解でき、より本質的に各社員が活動できるようになります。

さらにいうと、各目標の共有範囲を、部門内や社内全体で共有することで、各社員が組織の方向性をより明確に理解することができます。

また、各社員から見て、抜け漏れがないかも確認し合うことができます。

現場から意見とマネジメント側からの意見が違うこともあるので、目標の共有は抜け漏れの仕組みづくりにとって、重要な施策の一つです。

ただし、MBOを採用している場合、MBO評価と報酬が紐づいていることもあるので、共有には社員の同意を取ってから進めることを推奨しています。

目標設定ライブラリーの作成

等級と部門を掛け合わせた、目標設定の事例を収集し社員が参照することができる状態にしておくことで、社員に求められている目標設定の期待と社員の認識のズレを防ぐことができます。

また、ゼロベースで目標を考えるよりも、効率的に目標を設定できるので、社内工数の削減にも繋がります。

HR Techを活用して、業務を効率化させる

ここまで、抜け漏れを起こさない目標設定の観点をご紹介してきましたが、そもそもエクセルや紙ベースでの目標管理は、情報が抜け漏れる可能性が高いです。

今までの過去のデータをしっかりと蓄積していければ良いのですが、エクセルのファイル管理は、ミスや共有漏れがつきものです。ましてや人の評価にもつながるため、情報共有の制限も厳密に行わなければいけません。

また、チームや部門の整合性を確認するために、大量の評価シートを印刷して、大量の紙の中から発掘していく経験もあるのではないでしょうか?

組織が大きくになるにつれて、人事情報やデータは価値あるものに変わっていきます。

丁寧に人事情報を蓄積していくタレントマネジメントシステムを導入して、より目標設定・評価業務を効率化させ、より効果的な目標設定・評価運用へ移行してみてはいかがでしょうか?

弊社は、アジアで唯一、タレントマネジメントシステム「カオナビ」の導入パートナーとして、導入運用サポートをしております。サービスの詳細な資料や情報も用意しておりますので、下記よりお問い合わせいただければと思います。

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まとめ

抜け漏れを起こさない、目標設定時に人事部・トップマネジメントが見るべき観点と仕組みづくりをご説明してきました。ご紹介した内容はあくまで、一般的な観点になります。ただ、実際に我々も企業様とパートナーとして支援する中で、各社それぞれの特性があり、特性に合わせた目標設定・評価運用が必要となります。

もし、自社の特性に合わせた目標設定・評価運用へ変革していきたい場合は、無料個別相談会にご応募いただけますと、弊社コンサルタントが課題解決に向けてのヒアリング・提案をさせていただきます。

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米田 晃

B2B SaaS事業支援スタートアップ企業を経て現職。beyond globalにおいては東南アジアにおける日本企業への人事制度構築支援、人事制度運用サポート、及び社内のPerformance Management・1on1導入プロジェクトを担当している。
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