タイにおける「世代の違い」を組織戦略に活かすために
東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国に進出している日系企業数で、タイは4,567社(2015年JETRO調査)で一位です。そのタイにおいて、在タイ日系企業の駐在員から良くお聞きする「人」に関する悩みとして下記の言葉を良くお伺いします。
在タイ日系企業の駐在員から良くお聞きする「人」に関する悩み
「タイ人にやる気を出してもらうためにはどうすれば良いか?」
「タイ人の離職率が非常に高い。定着率を高めるためにはどうすれば良いか?」
「タイ人スタッフが受身で、言ったこともやってくれない‥」
などの悩みの声であり、ほとんどのケースが「タイ人は‥」という枕詞がつきます。
その背景には、「日本人」と「タイ人」を明確に選別し、
偏った「日本人の商習慣」で物事を見てしまっているのではないでしょうか。
もちろん、日本人の商習慣、タイ人の商習慣は異なるため、その「違い」を踏まえて組織・人事施策を考えることは重要です。それに加え、タイで人事制度、人材マネジメントを考えるにあたり、日本人駐在員・タイ人スタッフと国籍で分けて考えるだけではなく、世代別に思考する必要性を最近、強く感じています。
労働人口は世代別に分けて大きくは4つ。タイでも見られる世代間ギャップ。
1)1946-1965年生まれの「ベビーブーマー世代」現在、51-70歳 2)1966-1980年生まれの 「Generation X世代」現在、36歳-50歳 3)1981-2000年生まれ 「Generation Y世代(ミレニアル世代)」現在、16歳-35歳 4)2001-2015年生まれの「Generation Z世代」現在、1歳-15歳
ここタイにおいても、会社で働くX世代(30代半ば〜50代)とY世代(20代〜30代前半)では価値観が大きく異なってきているように感じます。Siam Commercial Bankの調査では「タイにおけるY世代の傾向」を下記のようにまとめています。
・情報収集手段は、ソーシャルメディアが約80%とSNSを通じて、周りの友人や同僚から情報収集する。
・Y世代は、平均して収入の80%を消費に回しており、貯蓄よりも消費への関心が大きい。
(ベビーブーマー&X世代は、平均して収入の60-70%を消費に回す)
・35歳までに3-4回転職を繰り返しており、ITを通じて友人などから次の仕事の機会を収集している。
(ベビーブーマー&X世代は、平均1-2回の転職回数)
・モチベーションの動機として、刺激的な同僚や、挑戦的なタスクを好む傾向がある。
(ベビーブーマー&X世代は、会社の安定性や、会社からの評価を動機とする傾向が強い)
などであり、ベビーブーマー&X世代とは異なる傾向があります。
「タイ人スタッフ」を一括りでまとめる色眼鏡を外して、世代間のギャップを理解し、また一人ひとりの傾向と向き合う必要があるのではないでしょうか?現在、タイのローカル企業は、柔軟にY世代の価値観を組織戦略に取り組もうとしています。例えば、石油公社であるPTT社は、イノベーションワークショップなどを開催し、若手の能力を最大限に活用する機会を提供しています。一度、PTT社のイノベーションワークショップを拝見しましたが、非常に活発に議論し、役員陣に鋭く提言していく若手社員の姿が印象的でした。
国籍の違い、世代の違いを活かす、在タイ日系企業向けの人事施策
「違い」を阻害するのではなく、「違い」から学び、組織強化に繋げる為に、在タイ日系企業向けの人事施策を最後にまとめます。
1)社員の人材MAPを創る。「タイ人」「日本人」と国籍を分けるだけではなく、世代毎、職務毎の傾向の違いを理解する。
2)若い社員の柔軟な発想をオープンにする機会を創る。イノベーション・トーナメントなどをおこない、新しい発想をオフィシャルに求めていく。
3)一人ひとりの「頑張り(成果)」が評価と報酬に連動する人事制度を構築する。タイ人スタッフに対して、受動的なタスクだけではなく、能動的で、挑戦的なタスクも渡していく。
4)評価結果をコマ目にフィードバックする。そのために、ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)を明確にし、可能であれば、中間面談を含め、四半期に一回振り返る機会(内省機会)を創る。
5)ロールモデルとなるタイ人スタッフを育成する。そのために、キャリアステップを明確にする。
6)社員間で切磋琢磨できるプロジェクトを定期的に行う。ベースとして、家族的な関係(居心地の良さ) を担保することは必要。
タイ人と日本人が相互にコラボレーションし、
Win-Winとなるチームが一つでも多くなることを願います。
増田 賢一朗
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