シンガポールでの雇用に伴い発生する定期業務の留意点

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前回までに、外国人を雇用する際のビザの種類採用手続きの留意点について解説してきました。今回は「採用後に必要な人事業務」について、毎月行う月次業務と年に1回行う年次業務とに分けて解説していきます。

1.雇用後に行う人事関連の月次業務

CPF(Central Provident Fund)申告

シンガポール人か永住権保持者に給与が発生すると、給与計算月の翌月14日までにCPF申告をしなければなりません。CPFは「シンガポール人と永住権保持者の強制積み立て個人年金」のようなもので、個人それぞれが未来の自分自身のために積み立てを強制され、政府が高利回り(今後は分かりませんが)で運用し、老後に年金として返ってきたり、家を買ったり大きな病気した際に引き出せたりするものです。自分で積み立てた分が将来自分に戻ってくるという点で日本の公的年金制度とは大きく異なるものになります。

CPFは従業員の給与に応じて会社が申告納付するものですが、従業員負担分と会社負担分があり、従業員負担分は給与から源泉徴収し、会社負担分は別途追加して納付することになります。多くの場合、従業員負担分が20%、会社負担分が17%となりますので、シンガポール人と永住権保持者を雇用する場合の人件費は給与月額の117%+αと考えてよいかと思います。また、CPF申告の期限は給与発生月の翌月14日となっていますが、CPFの計算自体は給与計算の際に行うことになります。

CPF申告は、書面での申告も可能ですが、「手書きする手間」「計算ミスのリスク」「手数料がかかる(申告すべき人数が増えた場合)」など、書面で行うメリットは基本的にありませんので、CSN(CPF Submission Number)というCPF申告用の会社アカウントを取得し、電子申告されることをお勧めします。

CPFの電子申告(e-submit)手続きはこちら↓から行えます。

https://www.cpf.gov.sg/eSvc/Web/Employer/Introduction

給与計算

社員を雇うと給与が発生しますので、まずは給与計算を行います。従業員が増えて10人を超えてきたり、残業代や時給計算が必要な社員が増加してきたりした場合は、市販の給与計算ソフトを使用した方が効率的かもしれませんが、数人程度の従業員数で、それなりの知識があればエクセルで給与計算を行っても特に問題ないことも多いです。

また、給与計算期間については15日締めなどの月末締め以外にすると、給与計算期間とCPF計算期間がズレてしまい、それぞれについての計算をする手間が生じてしまうという事情から、給与計算期間を月末締めにしている(給与計算の対象期間を「月初から月末まで」とする)企業が多いかと思います。給与支払い日は会社の事情に応じて、毎月月末(支払日以降の月末までの数日は前払いとなる)、もしくは翌月初の支払いとされるのが一般的でしょう。

月次の給与計算における主な作業はCPF計算となります。年齢や永住権取得のタイミングによってCPFの計算方法が異なる点や、給付一時金に対する計算上限値などには注意が必要です。詳しくは下記、CPFの計算概要をご覧ください。

https://www.cpf.gov.sg/employers/employerguides/employer-guides/paying-cpf-contributions/cpf-contribution-and-allocation-rates

その他の給与計算の留意点としては、SDL(Skills Development Levy)とFWL(Foreign Worker Levy)があります。

■ SDL(Skills Development Levy)について

SDLはSkills Development Levyの略で「シンガポール国内で働く人達のスキルアップのための施策を行う財源となる会社負担の強制徴収金」です。注意しなければならないのは、EP(Employment Pass)ビザの外国人を雇用している場合であっても負担が必要な点です。EPビザ保持者が1人で会社を経営している個人事業主のような場合であってもSDLを納付しなければなりません。

SDLは、CPF申告に含めて納付することができますが、EPビザの外国人しか雇用していない(=シンガポール人や永住権保持者を雇用していない)場合はWDA (Singapore Workforce Development Agency)という監督官庁のウェブサイトから別途SDLを納付する必要があります。ちなみに、従業員全員のSDL負担金額を合計した金額の1ドル未満は切り捨てて納付できる点は豆知識です。

SDLの計算とオンラインでの納付手続きはこちら↓から行えます。

https://sdl.wda.gov.sg/SDLCal.aspx

■ FWL (Foreign Worker Levy)について

FWLはForeign Worker Levyの略で、日本語では外国人雇用税と呼ばれますが、基本的にはWork Permit(建設現場の外国人作業員など)の外国人を雇用すると会社に負担義務が発生すると覚えておけばよいでしょう。ただし、Sパスの外国人も対象となる点は注意点です。FWLもCPFと一緒に申告納付できますが、シンガポール人&永住権保持者を雇用していない(CPF納付義務がない)場合は、別途GIRO(自動引き落とし)などで支払う必要があります。

FWLの概要については、こちら↓からご確認ください

http://www.mom.gov.sg/passes-and-permits/work-permit-for-foreign-worker/foreign-worker-levy

給与明細の配布

給与計算の結果を給与明細としてそれぞれの従業員に配付(電子配付もOK)し、給与を支払います。振込でも現金でも小切手でも問題ありません。ただし、給与明細に記載しなければならない情報はEmployment Actで定められていますので注意が必要です。

給与明細に記載すべき項目(2016年4月改正)については、こちら↓からご確認ください。

http://www.mom.gov.sg/employment-practices/salary/itemised-payslips

2.雇用後に行うに人事関連の年次業務

日本には所得税の源泉徴収という所得税の前払い制度があるため、1年間の所得をもとに税金計算をし直すという年末調整作業がありますが、シンガポールには所得税の源泉徴収がありませんので年末調整はありません。ただし、AIS (Auto Inclusion Scheme)という自動転送機能を使用している企業を除いて、IR8Aという「給与年額合計表」ともいえる資料を従業員ごとに作成し、翌年31日までに従業員に渡す必要があります。従業員はこれを参照して所得税申告を行うことになります。

2017年3月1日までに作成必須のIR8A(とその注意事項)のテンプレートは下記MOM( Ministry of Manpower )ウェブサイト↓からダウンロードできます。

https://www.iras.gov.sg/IRASHome/Businesses/Employers/Reporting-Employee-Earnings–IR8A–Appendix-8A–Appendix-8B–IR8S-/

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萱場玄
シンガポールの会計事務所CPAコンシェルジュ。/シンガポール法人設立、会計税務、ビザ申請、カンパニーセクレタリなど一括で対応。/「便利&正直」をコンセプトに従来の会計事務所の枠にとらわれない多様なサービスを展開。/シナプス社のオンラインサロン「ビジネスパーソンのためのシンガポール入門」の会員は随時受付中。 HP: http://cpacsg.com/
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