居住者の三分の一が外国人であり、多国籍チームを組成できるというのがシンガポールの大きな魅力の一つですが、シンガポールで外国人社員(日本人含む)、シンガポール人(永住権保持者含む)を採用する際の手続きを簡単にご紹介します。
EP(Employment Pass)により外国人を雇う場合
前回の記事「シンガポールの就労ビザについて」で紹介したビザ、EP(Employment Pass)を持つ外国人(日本人含む)を雇用するためには、以下3つの手続きが必要になります。
1. Jobs Bankに求人情報をだし、シンガポール人では候補者がいないことを確認する
まず知っておかなければならないのは、「外国人ではなくシンガポール人でそのポジションの候補者がいないか」を検討しなければならない点です。一定の基準を満たす場合は掲載を免除されますが、原則としてそのポジションの求人情報を政府管理の求人情報サイトJobsBankに14日間掲載し、シンガポール人の応募を募る必要があります。そして、シンガポール人には候補者がいないことを確認したうえでEP申請します。EP申請の際には、JobsBankの求人掲載番号を記載することになります。
Jobsbankの求人掲載義務と免除要件については、こちら↓からご確認ください。
http://www.mom.gov.sg/employment-practices/fair-consideration-framework
2.EPオンラインアカウントを取得する
EP申請は書面でも行えますが、作業もラクで審査結果も早い電子申告をするのが一般的です。電子申告はEP Online(EPOL)というMOM(Ministry of Manpower)のウェブサイトで行いますが、EPOLにログインするためには、会社としてEP Online AccountというIDを取得しなければなりません。
EPオンラインアカウントは、こちら↓から取得できます。
http://www.mom.gov.sg/eservices/services/work-pass-account-registration-wpar
3.MOM(Ministry of Manpower)のサイトから EP申請を行う
EPオンラインアカウントを取得すると、EPオンラインにログインしてEPの申請を行うことができるようになります。
EPの審査がどういった基準で行われるかに関しては論点が多過ぎるため、今回は割愛させていただきますが、無事にEPが承認されると、EPオンラインでIPA(In-Principle Approval)Letterという書類がダウンロードできます(IPAという記載はダウンロードしたファイルの1ページ目の左上にようやく書かれており、少々、分かりにくいです)。ご家族も一緒にシンガポールに来られる場合はEPの承認が出てからDP(Dependent Pass)を申請し、同様に承認(=IPAの受領)を受けておく必要があります。DPが却下されることはあまりありませんが、実際にDPの承認がでないというケースは存在します。
IPAには、EP発行の最終手続きに必要な資料や、人によっては健康診断が必須である旨が記載されてありますので、新しく外国人(いわゆる日本人駐在員なども含む、以下同様)を雇用する際によく確認しておく必要があります。雇用する外国人が日本からシンガポールに入国する時は、空港の出入国審査(イミグレーション オフィス)でIPAの提示を求められますので、事前にemailで本人へ送り、印刷・持参しておく必要があります。
会社は、雇用する外国人がシンガポールに入国した後でEPオンラインにてIssueという手続きを行いますが、新規EPの場合はEPの承認(Approval)から6か月以内にIssueの手続きを取る必要があります。ちなみに、IPAは、書面内にEP番号(FIN番号といいます)が記載されており、このEP番号があればEPカード(緑色の身分証明書)の取得前でも住居や携帯電話の契約などをすることができます(但し、契約相手が認めない場合もあるため確認は必要)。
EPオンラインでIssueという手続きをすると、MOM(Ministry of Manpower)とのアポイトメント取得の指示が表示されますので、アポイントメント取得のページ(https://services.mom.gov.sg/appointment/Default.aspx?action=Make)から、
アポイントメント(翌日以降、15分毎の時間枠の選択肢があります)をとります。アポイントメントの時刻とMOMの住所を雇用する外国人へ伝え、その外国人は指定された時刻にMOMを訪問し、証明写真や指紋の登録を行います。
すべての登録が完了すると、後日、EPカードが指定の住所(Issue手続きの際に指定した住所)に郵送されます。
シンガポール人(永住権保持者含む)を雇用する場合
シンガポール人(永住権保持者含む)を雇用する場合はビザの問題はありませんので、労使双方で雇用契約にサイン(EP外国人の場合も必要)をして雇用手続き完了となります。ただし、シンガポール人の場合は毎月CPFの申告納付があるため、会社としてオンラインでCPFの各種手続きを行えるようにするCSN(CPF Submission Number)というアカウントを取得しておく必要があります。CSNの取得はシンガポール人の雇用前でも雇用後でも構いませんが、雇用後は毎月手続きする必要があり、CSNを取得していないと書面での手続きが必要となってしまいますので、早めにCSNを取得しておくことをお勧めします。新設法人の場合は、設立後すぐに取得しておくと良いかもしれません。
CSN(CPF Submission Number)に関する情報は下記↓からご確認ください。
シンガポール人の雇用は簡単に済ませてしまえますが、逆に言うと外国人を雇用するのはそれだけ面倒(そもそも承認されないというのが一番やっかいですが)とも言えます。
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