シンガポールの就労ビザについて

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この記事を読んでいる読者の中には、シンガポールで支店、現地法人、駐在員事務所などの設立を検討されている方、または、新たにシンガポールで日本人の雇用を検討されている方もいらっしゃるかと思います。

日本人はシンガポールにビザ無しで入国し滞在することができますが、30日を超えて滞在する場合はビザが必要になります。ただし、滞在期間に関わらず1日でも現地で働く場合は、原則として働くことができるビザが必要になりますので注意が必要です。

ビザには様々な種類がありますが、働くことを目的とし、働くことを条件に滞在許可を得るタイプの「働くことが義務のビザ」と、本来働くことが主要目的ではないものの「働く権利があるビザ」に大別されます。日本人に限定しない場合はビザの種類がとても多くなり複雑ですので、日本人がシンガポールで働く場合の主要なビザに限定して、その特徴を挙げていきます。

※ ビザ一覧は、就労ビザの監督官庁であるMinistry of Manpower(以下,MOM)
http://www.mom.gov.sg/passes-and-permitsにてご確認ください。

働くことが義務のビザ

EP (Employment Pass)

働くことを目的にシンガポールに滞在している多くの日本人はこのビザによって滞在しています。自覚されていない方もいらっしゃいますが、シンガポールでは一番所得の高い高度外国人や専門職のためのビザとなっており、世界では所得の高い層に該当する日本人は通常、このビザを取得することになります。

EPを申請するためには、月額給与で3,300ドル以上の職の内定が出ていることが必要となりますが、MOMの審査で見られるのは主に、「学歴」「専門性」「給与」「年齢」で、要するにこの国にとって欲しい高度人材かどうかというところがポイントになります。

個人の属性だけでEP(とS Pass)が通りそうかどうかは、下記のセルフアセスメントツールである程度判定ができます。ただし、あくまでも「このツールの判定で不可とでれば絶対にEPの承認がでないが、これでOKと出たとしても却下される可能性は十分にある」ため、EPが受かる可能性があるかどうかを判定する程度のツールだと思っていただいた方がよいかと思います。

■ Self Assessment Tool  → https://services.mom.gov.sg/sat/satservlet

また、MOMがEPを審査する際には個人の属性だけでなく、会社の属性も審査の材料となります。つまり、雇用主である会社が現時点で雇用しているシンガポール人の人数(=外国人ばかり採用していないか)、この先シンガポール人を雇用する計画があるのか、この国に雇用以外の方法(納税など)で貢献している会社か、といった点も上記の個人属性と合わせて総合的に判断されます。特に、超小規模会社(日本人が1人でシンガポール法人を経営している実質的な個人事業など)の場合で会社設立後2年、3年と経っているにも関わらずシンガポール人を雇用していない場合などは、追加で日本人を雇用しようとしてもEPが承認されないばかりか、それまで承認されていたオーナー経営者のEPの更新も却下されるという事態が起こっています。

S Pass

日本人でもこのビザで働いている人もいらっしゃいます。EPとの違いは大きく2点。

①EPよりも月額給与が低くても申請可能
②S Passを申請するためには、会社は複数のシンガポール人等を雇用していなければならないという「S Passの人数制限」がある

です。

①は月額最低給与が2,200ドルとなっています。
②は業界によって異なります。6人シンガポール人を雇用してS Passが1人申請できるといった感覚です。

※以下でSパスの枠を調べられます。

http://www.mom.gov.sg/passes-and-permits/work-permit-for-foreign-worker/foreign-worker-levy/calculate-foreign-worker-quota

WP (Work Permit)

基本的には新興国からの低所得者を建設現場作業員や住み込みのメイドとして雇用する場合のビザとなり、日本人は通常該当しませんが、スポーツ選手など一定のパフォーマンス職の場合は取得することも可能です。

働く権利があるビザ

LOC(Letter of Consent)

http://www.mom.gov.sg/passes-and-permits/letter-of-consent

EPやS Passの方の扶養家族に対して発行されるビザとしてDP(Dependent’s Pass)という帯同者ビザがありますが、DP保有者(S PassのDPは除く)も実はこのLOCを取得することで働くことができます。LOCの大きな特徴として、「最低給与が無い」「S Passのような枠が無い」ということが挙げられます。例えば月額1,000ドル程度の給料でも日本人が雇えますので、日本人の主婦の方を雇用したいという日系企業は多いです。

PR(Permanent Residence)

いわゆる永住権で、これを取得した場合も働くことが可能です。2009年頃までは取得するのがとても簡単だった永住権ですが、2016年7月現在では極めて難しくなっており、一般的には、長期間(少なくとも5年程度)シンガポールに住み、社会的地位も所得も高いといったような高度人材で、かつシンガポールとの生活密接度なども考慮したうえで総合判断されているといわれています。永住権は純粋に永住するための権利であり、必ずしも働くことを目的としたビザではないため、監督官庁はMOMではなくICA(移民局:Immigration & Checkpoints Authority of Singapore)となっています。

https://www.ica.gov.sg/page.aspx?pageid=151

Work Holiday

http://www.mom.gov.sg/passes-and-permits/work-holiday-programme/eligibility

いわゆるワーホリです。世界大学ランキングのトップ200校しか認められていなかったところ、2015年にこの条件は事実上撤廃されたため条件が若干緩和されました。18歳から25歳までの日本の大学の在校生もしくは卒業生であれば基本的に申請が可能で、6か月までシンガポールで働くことが可能です。勤務している間は無給でも構いませんが、さすがに無給だと物価が高いシンガポールでは生活できないということで、少なくとも滞在費程度の給与を支払うのが一般的です。

その他

その他にもEntrePassやPEP、Training EPなど、日本人が働くことができるビザがありますが、条件が特殊のため実例は極少数となっています。気になる方はMOM管轄ビザ一覧(http://www.mom.gov.sg/passes-and-permits)にてご確認ください。

以上、日本人がシンガポールで働く場合の主要な6つのビザをご紹介しました。繰り返しですが、日本人の場合は通常はEPというビザによることになりますが、「1日でもシンガポールで働く場合は働くことができるビザが必要」「無償の労働でもビザが必要」という点は注意が必要です。バレルかバレないかは別の論点ですが、ワーホリではない一般の学生ビザの日本人や旅行者に仕事をさせるのは違法就労となります。

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萱場玄
シンガポールの会計事務所CPAコンシェルジュ。/シンガポール法人設立、会計税務、ビザ申請、カンパニーセクレタリなど一括で対応。/「便利&正直」をコンセプトに従来の会計事務所の枠にとらわれない多様なサービスを展開。/シナプス社のオンラインサロン「ビジネスパーソンのためのシンガポール入門」の会員は随時受付中。 HP: http://cpacsg.com/
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