海外工場で作業員の様子を観察していると製品の取り扱いが雑で「品質意識が低いなあ」と感じることがあります。作業員が手で製品を取り上げる動作でも「製品にダメージを与えないように意識しているか」で取り扱いがずいぶんと変わるものです。製品は多くの作業員の手を経て作られて行きますから、作業員一人一人が高い品質意識を持っていることが、製品の品質に繋がるのです。
海外工場では作業員の出入りが激しく、常に一定数の新人が働いているのが普通ですから、管理者は常に作業員の品質意識を高める必要があります。今回も具体事例を交えながら、作業員への品質意識を高める手法を解説します。
1:作業員の製品への取扱が荒かった
ある工場で傷による不良が増えていました。私は管理者に原因を質したところ「いろいろ考えてみたのですが、原因が分からずに困っているのです」と言い出しました。そこで私は管理者と共に現場に入り、作業の様子を観察しましたが、どの作業員も製品の取り扱いが荒いのがとても気になりました。「作業員はあのように製品を持っているが、正しい持ち方なのか」「製品箱に製品を入れる時にも、ずいぶんと雑に入れているが製品のダメージが大丈夫か」と質問しました。そして私は「作業員があのように製品を雑に取り扱うと、製品がぶつかり傷になる可能性もあるのではないか」と指摘したのです。管理者は「作業員には製品を大事に取り扱うように説明しているのですが、なかなか理解してくれないのです」と言い訳を始めました。
2:不良を記録せずに処分していた
ある工場で生産した製品の数が合わない問題が発生していました。管理者は「1000個分の材料を投入して生産したのですが、完成品は980個です。工程内で発生した不良は15個ですから、5個足りないのです」私は管理者に「作業員が不良数量ごまかしている可能性は考えたのか」と質問すると「いやそんなことはしないはずです」と言い出しました。私は「作業員を信頼しないと言っているのではない。単純に可能性としてごまかすこともあり得ると言っているのだ。管理者である以上、全ての可能性を検討すべきではないか」と指摘して、徹底的に調査を行わせました。すると作業員が作業方法間違えて不良品を作ってしまい、上司に怒られるのが怖くて不良品の記録を付けずに処分していたことが判明したのです。
3:作業員の品質意識を向上させる手法とは
このように「作業員の製品の取り扱いが荒い」「不良品を記録に付けずに勝手に処理してしまう」などの問題は作業員の品質意識が低いことも原因です。このような問題が発生している場合には「管理者に作業員の品質意識を向上させる責任がある」と指摘して次の3項目を正しく理解させることが大切です。
1)作業員に品質の重要性を理解させる
作業員の品質意識を高めるには、製品の品質がなぜ重要かを理解させることが必要です。作業員には品質の重要性を身近に感じさせるために、次のように説明するのが効果的です。
◆製品の品質は私達の生活を安定させる
品質の悪い製品を生産するとお客様の信用を失い注文が減ってしまうことがあります。そうすると会社も利益が出ませんから、そこで働く従業員の生活も不安定になってしまうのです。品質の良い製品を生産すればお客様の信用を得て、製品が継続的に売れるようになりますから、従業員の生活も安定するのです。
◆製品の品質が悪いと仕事が増える
品質の悪い製品を生産してしまうと客先でクレームとなり、製品を全数再検査したり修理をしたりなど、仕事が増えてしまいます。再発防止のために作業工程が増えるケースもあります。このように品質が悪いと仕事が増えてしまうのです。
2)品質は繰り返し説明を行う
品質の重要性は1回説明しただけでは理解することができません。朝礼などで継続的に説明して理解させるのはもちろん、不良が発生したりクレームなどの問題が起きたときに必ず品質の重要性を説明します。上司が熱心に説明を繰り返す姿勢を見て、作業員が品質の重要性を理解するようになるのです。
3)品質ルールを守らない作業員には注意を行う
良い品質の製品を生産するためには品質ルールを守ることが重要です。管理者はもし作業員が品質ルールを守っていないことを発見したら、その場で注意を行うことが大切です。もし注意をしなければ作業員は「品質ルールなどを守らなくて良い」と考えてしまい品質意識が低下するからです。管理者には作業員の品質意識を高める責任がありますから、もしルールを守っていないことを発見したら必ずその場で注意するようにします。
立川剛
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