海外の工場で「現場力を強くしたい!」といった相談をよくいただきます。それでは現場力とは何でしょうか?私が思うところ、現場力とは班長の管理能力です。現場の人、もの、機械、作業方法に精通している班長の管理力が強ければ現場力は間違いない強くなるのです。
「そうは言っても、うちの工場の班長は作業員上がりで管理力がないからなあ」
確かに班長は一般的に作業員から昇格させるため、基本的な管理知識がないまま現場の管理を行うことが多く、その結果現場力が弱くなっている工場が多いのです。班長に対しては自社で管理者教育を行うしかありません。班長への管理者教育が現場力に大きく影響してくるのです。
では、班長への管理者教育としてどのようなことを行えばよいのでしょうか。まずは、現場でよく見られる班長の問題点について紹介します。
現場でよく見られる班長の問題点
1. 班長が自分の責任を理解していなかった
ある工場で工程内不良が大量に発生していました。管理者に理由を質すと「客先からの要請で作業標準書に確認項目を追加したのです。ところが、現場の作業員がこれを守っておらず、結果的に大量の不良品が発生してしまったのです」と答えました。私は管理者と共に現場に入り、作業員にインタビューを行いました。すると作業員は「作業標準書に追加があったことは知っていましたが、特に説明が無かったので、何時からこれを守れば良いのか分かりませんでした」と答えたのです。
私は班長を呼び出して「作業標準書の追加項目の教育は行ったのか」と質問したところ「(上司である)課長が説明するだろうと思っていたので、私は説明していませんでした」と答えたのです。「お前は課長が説明していないのを知っていたのだろう。課長に説明するように依頼したのか」「いや、いつか説明するだろうと思って、依頼していません」このように班長は自分の責任を理解していなかったのです。
2. 作業員に指示ができない班長
管理者と共に現場を観察したところ、工程内に大量の製品が置いてありました。私は班長に製品について質したところ「この製品は問題が見付かったので修正するために置いてあります」と答えたのです。「いつ、修正を行うのだ」「実は作業員に修正を指示したのですが、面倒だと嫌がって修正を行わないのです」私は驚いて班長を指導しようとしたところ、管理者が「実は、先月このラインの班長だった者が退職してしまい、この班長は作業員から昇格したばかりなのです」と言い出しました。この班長は「最近まで他の作業員と同じラインで働いていたし、年上の作業員も多いので、強く指示をだせないのです」と困った顔で悩みを打ち明けはじめたのです。
現場で作業員を管理しているのは班長ですから、班長の管理力と現場力は比例しています。班長の管理力が弱いと現場力が落ちてしまい、問題が多発することになります。班長の管理力を高めるために、管理者には次の3項目を理解させて、班長の教育を正しく行わせることが大切です。
班長に正しい教育を行う3つの手法
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班長の責任を理解させる
まず、班長の責任を徹底的に理解させることが大切です。班長の責任はジョブディスクリブションなどで教えると難しすぎて理解できないことが多いので、次の3項目が責任であると簡潔に教えるようにします。
- 「ルールを作業員に理解させる」
- 「ルールを作業員に守らせる」
- 「異常時に上司に報告する」
この3項目を徹底的に教えて理解させあと、作業標準書やチェックリスト、異常時の報告ルートなどの具体的な方法も併せて教えるようにします。
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簡潔な監督者教育を行う
班長には監督者としての必要な管理知識の教育を行います。監督者教育で必要な教育内容は「報連相の方法」「指示の出し方」「仕事の教え方」「注意の仕方」「PDCAの管理方法」などが中心になります。班長は一般的に難しい教育内容を理解することが出来ないことが多く、実際に発生した問題の原因や対策などの具体事例を中心に説明を行います。教育は定期的に行うようにして、内容を忘れないようにさせます。
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班長会議を実施する
管理者が主導して毎月1回、班長会議を行います。各ラインの班長が集まり、作業員の指導や管理で困っていることや抱えている悩み、問題などをフリー・ディスカッションとして協議させるのです。班長は作業員と管理者の板挟みになって悩んでいることが多いので、管理者は班長の本音を聞き出して、対策を一緒に考えるようにします。班長にとっては管理者や他の班長が悩みを聞いてくれるだけでも、一種のガス抜きとなりモチベーションも上がるのです。
立川剛
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