RPA(Robotics Process Automation)は、決まった事務業務を自動化する技術です。
あなたが、きちんと教えたことは365日24時間、文句も言わずミスなく作業してくれます。
RPAを活用すれば、業務効率化と品質向上を実現することができ、人件費も削減できます。
日常業務で多大な工数を要している以下のような事務作業を、社員に代わり実施することができます。
- 顧客からの問合せ・苦情メールの分類/返信と社内関係者へのメール連絡
- 経費精算申請とその領収書が漏れなくきちんと提出されているかの目視確認
- 長時間労働者の検索と本人・上司へのリマインドメール送信
RPAは、Excelの事務作業やメール送信、基幹システムの利用をすぐに覚え、一連の作業を実行してくれます。
これがロボットと言われる、RPA(Robotics Process Automation)のイメージです。
最近では、大企業だけでなく、中小零細企業でも手軽に導入できる価格帯のベンダー/製品が増えてきたため、
導入を検討する企業も増えてきました。
すべての企業がRPA活用により業務を効率化し、社員が創造的な仕事により時間を使えるようにするべきです。
本記事では、RPAとは何か解説した上で、RPA活用方法と費用対効果、導入のステップをお話しします。
目次
1.RPAと働き方改革
RPA(Robotics Process Automation)は、働き方改革でよく聞く「労働生産性向上」に役立ちます。
企業はこれまで、業務効率化と人件費削減のために、情報システムの活用を進めてきました。
現在は、中小零細企業も含めて約75%の企業で人事・経理をはじめとした業務システム導入がひと段落しています。
[総務省「ICT利活用と社会課題解決に関する調査研究(2017)]
しかし、その業務システムを利用するだけでは対応できない業務がまだ多く残っています。
Excelを利用した業務やメール周知が必要となるような、手作業でやらざるおえない業務です。
それを自動化できるのがRPAです。
このRPA、働き方改革の流れも影響して、導入企業・市場規模が急速に増えており、
2018年には、日本国内の5,000社がRPAを導入する見込みも発表されています。
国内の上場企業が3,613社(2018年4月11日時点)なので、その数自体の多さが分かるかと思います。
アメリカのGartner社の「日本国内企業のRPA導入状況調査」でも、
約40%の企業が「RPAを導入済・もしくは検討中」という結果が出ています(下図参照)。
RPAツールの国内市場に関しても、2016年15億円が、2030年には147憶円と9.8倍になるとの予測も出ています。
[富士キメラ総研,2017サービスロボット/RPA関連市場の将来展望(2017/9)]
2.代表的な各社RPA導入事例
日本国内だけでなく、世界でも保険や金融業界をはじめとして、決まった作業を可能な限り自動化し、
生産性向上と人件費削減に取り組む動きが加速しています。
保険業界では、保険契約書の事務作業、金融業界では預金・為替・融資の自動化、
そして、すべての企業に共通する経理事務や勤怠管理で、作業の自動化が始まっています(下記参照)。
RPAに業務を任せることで、人が手作業で実施していた作業を85%削減することや、
1,500人分の業務量を削減することが可能になります。
3.RPA適用業務領域
では、具体的にどのような業務でRPAを活用できるのでしょうか。
RPA導入の対象業務は「業務システムで効率化した業務以外の未だに手作業が残っている細々とした業務」です。
業務システム導入時に、開発費用を抑えるために製品の標準機能を利用することになり、
泣く泣く手作業を残した業務や、元々業務システム導入の対象外として取り残されてきた、
メールやExcelを利用して実施している業務です。
冒頭でも述べた以下のような業務で、多くの企業が手作業に悩みを抱えてきた業務が対象になります。
顧客対応と社内連絡
- 顧客からの問合せ・苦情メールの分類、返信、社内関係者へのメール連絡
- FAXで届く発注依頼の社内管理台帳入力、在庫確認、営業担当者へのメール連絡
経理
- 経費精算申請とその領収書が漏れなくきちんと提出されているかの目視確認
- Excel管理している社内外の取引情報を毎日経理システムに手動アップロード
このように、RPAが活躍する対象業務は広範に渡りますが、
次章では、弊社が専門としている人事業務領域での活用に焦点を当ててお話ししていきたいと思います。
4.人事業務におけるRPA活用
人事業務は他の業務と比較しても効率化できる部分が多いです。
普段、人事業務に携わる方であれば、煩雑な手作業が沢山あることを思い返してみて下さい。
その多くの手作業を楽にするチャンスです。以下がRPAを活用することができる主な人事業務です。
採用/契約更新
- 新入/中途社員が入社前後に提出する個人情報の申請ミスの確認 ※
- 契約更新を迎える派遣社員の対象者チェックと本人へのメール通知
※新卒200名入社の場合は目視確認作業に担当者1名で約17時間要します(1件5分)
人事関連申請
- 家族情報申請フォーマットの入力漏れ確認
- Web情報を参照して定期区間申請が適正な経路で申請されているかの確認
- 年末調整の提出資料となっているExcelフォーマットの記入漏れ確認
- 各種申請内容が人事給与システムの情報と合っているかどうかの確認
勤怠管理/給与計算
- 一定時間以上の長時間労働をしている社員検索と本人・上司へのメール送信
- 月次給与計算のための複数事業所からの社員勤怠データ収集
- 収集した勤怠データに間違いがある場合のメール差し戻し
- 収集した勤怠データの間違え訂正と給与計算システムへのCSVアップロード
5.RPA導入・運用保守費用
ここまで、RPAで何ができるかをお話ししてきました。
では、RPAを活用するのに実際どの程度費用が必要になるのでしょうか。
RPA活用には、以下2つの費用が必要です。
これらを合算して、5年間を目途に費用を試算することが必要です。
- 初期費用(製品ライセンス・SEによるRPA導入等)
- 運用保守費用(製品ライセンス・機能バージョンアップ対応・SE問い合わせ/設定対応等)
初期費用は、50万円から1,200万円まで、ベンダー/製品によって幅広い価格帯が存在しています。
運用保守費用は、一般的には初期費用の約10~20%と言われています。
6.RPA導入効果
これらの導入・運用保守費用を投資して得られるRPAの主な導入効果は以下3つです。
- 決まった作業の効率化・品質向上と人件費削減
- ストレスから解放されて仕事の楽しさを味わう
- 創造的な仕事による売上拡大と離職リスク低減
1. 決まった作業の効率化・品質向上と人件費削減
前項でもお話しした通り、様々な業務の工数削減が可能です。
RPA導入企業の96%が5割以上の業務工数を削減したという調査結果もあります。
加えて、人間であれば作業ミスする内容も、機械が決められたルールの元で実施するため、
基本的に不具合がなければ、作業ミスゼロの品質向上を達成できます。その結果、人件費も削減できます。
2.ストレスから解放されて仕事の楽しさを味わう
多くの社員にとって、毎回同じ単純作業を繰り返すことはストレスがかかります。
それをRPAに代行して貰うことで、より創造的で挑戦的な仕事、自分がやりたいと思う仕事、
会社が本当にして貰いたい仕事に時間を回すことができ、仕事の楽しさを味わうきかっけ作りが可能になります。
3.創造的な仕事による売上拡大と離職リスク低減
社員は作業ではなく、業務改善や創造的な仕事に取り組む時間を確保することができます。
人事担当者の場合、勤怠データ集計に1日使っている工数をRPA活用で削減すれば、
より多くの優秀な人材を獲得する採用戦略を考える時間を作ることができます。
優秀な人材の採用率を上げれば、間接的ですが売上拡大に繋がるはずです。
また、社内の優秀な人材が離職しないように、
日々、全社員のエンゲージメントを把握する仕組み作りや、
離職防止策の実行に時間を使うことができます。
7.RPA導入のステップ
RPAを導入したいと考えた際には、以下3つのステップで進めて下さい。
各ステップを進める上でのポイントもお伝えしていきますので是非参考にして下さい。
- ステップ1:現状課題を特定し解決までの道筋を立てる
- ステップ2:人と会いベンダー/製品を選定する
- ステップ3:効果を実感しながらシステムを導入する
ステップ1:現状課題を特定し解決までの道筋を立てる
RPA導入を考える際に、まずは、自社の業務課題を特定して下さい。
そして、その解決を通して、いつまでに何を実現したいか明確にする必要があります。
RPA導入自体が目的ではなく、業務効率化や品質向上、人件費削減、
空いた時間をより創造的な仕事へ費やし売上拡大に寄与することが目的となるはずです。
業務課題がRPA活用でどのように解決できそうか、実現イメージを持つことも大切です。
できれば、展示会やセミナー、WEBページからRPAベンダー/製品と接触し、製品デモを依頼することをお勧めします。
プロジェクトメンバーで実際の製品を見て議論していくことで実現イメージが膨らむはずです。
「適用できそうな業務には可能な限りRPAを活用していく」という姿勢で臨むことが、
RPA投資対効果を上げていく秘訣です。
また、RPAは様々な業務領域に適用できるため、複数部署やチームを横断するプロジェクトとなることが多いです。
そのため、社長や経営陣の元、全社プロジェクトとして進めることが成功の鍵となります。
合わせて、業務を理解できるIT専門家を社内外問わず探して、
早い段階からプロジェクトメンバーとして牽引して貰うことを推奨します。
ステップ2:人と会いベンダー/製品を選定する
次に、自社がどのベンダー/製品を採用するか決めて下さい。
主要なRPAベンダーだけでも約20社あります。各社、機能や導入対象企業規模、価格帯が異なるため、
WEBページや比較情報を基に、自社に合いそうなベンダーを5社程見つけて、まずは各社に製品デモを依頼しましょう。
もちろん、製品機能や価格帯は重要な選定軸となりますが、肝となるのはベンダーや導入企業の担当者です。
RPA導入をリードしてくれるプロジェクトマネージャーやSEには、自社の業務を正しく素早く理解してくれ、
かつ、基幹システムやビックデータ、関連システムとの連携まで理解できるような十分な経験が求められます。
そのような担当者を見極めるために、営業段階でも、数回の打合せを通じて、
実際の担当者と会うことを強く推奨します。
いくらシステム導入といっても、最後は、誰と働くか、結局は人が一番大事です。
候補先となるベンダーを数社に絞り込んだ時点で、RFP(提案依頼書)を作成し、各社に提案を依頼しましょう。
RFPでは自社の目的や課題、プロジェクト期間や各種要件、関連システム情報を合わせて提示して下さい。
自社を深く理解して貰うために、ベンダー担当者と直接じっくり話し合うことが大切です。
ステップ3:効果を実感しながらシステムを導入する
ベンダー各社の見積前提が揃い、プロジェクトチームで「この1社」を決めることができたら、
プロジェクト開始準備をします。プロジェクトで揉めることないよう、
契約書では、ライセンス体系や責任分担等、細かな部分まで、
IT専門家の視点も交えてしっかりと確認し締結することが必要です。
そして、ようやくプロジェクト開始です。
基幹システムやグループウェア、インフラの導入とは異なり、
RPA導入プロジェクトは「いかに短期間で検証し導入範囲を広げるか」が重要で、
実証に重きを置くことが特徴的です。
プロジェクトの大まかな流れは以下です。
「業務ヒアリング/導入範囲検討」
「試験導入(POC: Proof of Value)」
「本格導入/導入範囲拡大」
試験導入でのRPA稼働まで最短2~4週間で実施できるため、
導入効果を把握しながら進めることができることも良い点です。
8.最後に
RPAに限らず、AIやビックデータを活用して、私たちの働き方自体に変革が訪れているのは言うまでもありません。
PCや業務システムが中小零細企業にも普及したように、RPAも今後5年で、すべての企業への普及が加速していきます。
なかには「RPAが人の仕事を奪う」と不安を持たれる方もいると思います。
確かに、今までやっていた仕事をロボットに代行して貰うことで、仕事自体が無くなるという人も出てきます。
しかし、そのように消極的に受け止めるのではなく、もっと積極的に、
「ロボットに代行して貰うおかげで骨の折れる作業から解放される。その時間で今まで手を付けることができなかった作業に着手できるし、
更には本来人間がやるべき創造的な仕事に取り組むことができる。」と受け止めていくのが、
ロボットと協業する新しい時代に必要な考え方ではないでしょうか。
萩野亮
Latest posts by 萩野亮 (see all)
- 「同僚はロボット」RPAによる人事業務自動化と費用対効果 - 2018年4月12日