工場では作業員が作業標準書に従って製品を生産しています。工場にある作業標準書の数量は膨大な枚数になりますが、これを全ての作業員に正しく守らせることにより「品質、納期、コスト」を満足させる製品を作ることが出来ます。しかし、現場を良く観察すると「作業員の作業と作業標準書の内容が合致していない」などのケースが見受けられます。クレームの原因を調べていくと「作業員が作業標準書を守っていなかった」などが判明するケースがあります。
このような場合、管理者は「作業標準書を守らない作業員が悪い」と安直に考えて、全ての責任を作業員に転嫁しようとします。そのため対策が「作業標準書の教育を徹底する」「守らない作業員に注意する」などと効果が少ないものになってしまうのです。
管理者には「作業員に作業標準書を正しく守らせる義務がある」と指導して理解させるのはもちろんですが、作業標準書を守らせるポイントも詳しく説明して理解させる必要があるのです。今回も具体事例を織り交ぜながら、作業員に作業標準書を正しく守らせる手法を解説します。
作業員が判断して検査を行っていなかった
ある工場で客先からのクレームが発生しました。私は管理者に「今回クレームとなった箇所は検査工程で全数目視検査行っているはずだ。なぜ流出してしまったのだ」と詰問しました。管理者は答えることができなかったので、私は作業を担当した作業員にインタビューを行いました。「作業標準書には目視検査を行うとありますが、あなたは本当に検査を行いましたか」「実は検査を行っていませんでした」「なぜ検査を行っていなかったのですか」「この検査箇所は2年ほど前に追加事項となりましたが、その後この不良は全く発生しなかったのです。ですからもう検査しなくて良いと思ったのです」作業員はこのように正直に答えてくれました。念のために他の作業員にも確認したところ、同じように「検査する必要がない」と自分で判断して検査を行っていなかったのです。
守ることの出来ない作業標準書となっていた
別の工場でも全数目視検査の箇所が流出して、クレームが発生していました。ラインの班長や作業員は「対象ロットは全数目視検査を行いましたが、流出してしまいました」と検査を行っていたと強調しました。現場に行き検査の作業観察をしていると、徐々に仕掛り品が溜まってきたのです。「検査1個当たりの標準時間と実際の時間は合致しているのか」と管理者に実測させたところ、標準時間より実測が遥かにオーバーしていたのです。この事実を班長に突き付けたところ「実は検査項目が新たに追加されましたが、作業時間は更新されなかったのです。従って作業標準書通りの検査を行っていると生産に間に合わないのです」と検査のルールを守ることができない状態を認めたのです。
作業員に作業標準書を正しく守らせる3つの手法
このように「作業標準書を正しく守っていない」「守ることのできない作業標準書になっている」などの問題があると、不良が流出してクレームになる可能性があります。管理者には「作業標準書を正しく守らせる義務がある」と指摘して、次の3項目を正しく理解させることが大切です。
1)管理者は作業員の作業観察を行う
作業標準書には作業の手順や品質のポイントなどがまとめてありますから、管理者はこれを作業員に正しく守らせる義務があります。作業員に作業標準書の教育を行うことはもちろんですが、現場で作業観察を行い、作業員が作業標準書を守っていることを確認します。作業観察時には作業標準書と実際の作業を1項目ずつ比較確認することが大切です。もし作業員が作業標準書と異なる作業を行っている場合は、その場で作業を止めて正しい作業方法を守らせるようにします。
2)作業標準書の更新時には作業員に確認する
作業標準書の更新時には必ず作業員に作業標準書を守れることを確認します。特に新規項目を追加した際には「作業方法通りに実際の作業が行えるか」「規定の時間内で作業が行えるか」など作業員に確認します。この場合は班長や管理者自身が作業標準書を使って作業を行い、自ら確かめることも有効です。作業員の中には作業標準書より良い作業方法を考えて勝手に行ってしまうケースがありますから、もし良い作業方法を考えた場合には必ず上司に報告して、作業標準書を更新してから行うようにさせます。
3)作業標準書を守らない場合は注意を行う
工場では作業員が作業標準書通りの作業することにより、効率良く品質の良い製品を作ることができるようになっています。ですからもし作業標準書を守っていない場合にはその場で注意を行います。「最近不良が出ないので目視検査をしなくても良いと思った」などのケースは作業標準書の重要性を説明して理解させます。「面倒だったので守らなかった」など怠慢で作業標準書を守らないケースは厳しく注意を行い、必ず守らせることが大切です。
立川剛
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